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「脱翅女王アリが別のコロニーの中へ そして本巣の中へ」その後

8月28日のブログ「脱翅女王アリが別のコロニーの中へ そして本巣の中へ」のその後ですが、トゲアリの女王アリが3匹死んでいました。この3匹が、28日に観察した3匹なのかはわかりません。

このトゲアリの女王アリは頭部が落とされている 8月31日19時6分撮影
死んだトゲアリの女王アリを運ぶ働きアリ 8月31日19時16分撮影
死んでいた女王アリを取り出した 8月31日19時19分撮影

クロオオアリのコロニーにトゲアリの新女王アリが入る

クロオオアリのコロニーBK170530-081は、アンテグラウンドⅢ型の活動室を使っていますが、この活動室は開放蓋にしています。
8月24日、この活動室の中で、トゲアリの脱翅女王アリを見かけました。8月21日から飛翔を観察しているT140906-40から飛んできた女王アリと思われます。

8月24日14時26分撮影

そのままにしておきました。
8月31日に見ると、トゲアリの女王アリの死体が、このコロニーのゴミ置き場で2体見つかりました。

8月31日10時57分撮影
10時58分撮影

念のために、このクロオオアリのコロニーの女王アリの様子を確かめました。普段と変わらない様子でした。

BK170530-081の女王アリ 11時1分撮影

脱翅女王アリが別のコロニーの中へ そして本巣の中へ

8月24日、トゲアリのT210912-02の活動室(アンテグラウンドⅢ型)で、トゲアリの脱翅女王アリを3匹見つけました。このコロニーは創設3年目で、羽アリはまだ誕生していません。ですから、この3匹は、8月21日から飛翔を観察しているT140906-40の女王アリです。

1匹目 クロオオアリを捕らえて化粧行為をしているように見えた 8月24日11時28分撮影
2匹目 働きアリから拘束されていなかった 11時33分撮影
3匹目 働きアリが女王アリを捕らえようとしていた 11時34分撮影

これらのトゲアリの脱翅女王アリは、T210912-02の活動室は開放蓋になっているので、活動室の中にたまたま飛び込んだのだと思います。だとすると、活動室に入った時には、有翅のままだったことになります。そこで、活動室の中で脱翅したことになりますが、活動室の中はかなり生活ごみが散乱しているためなのかも知れませんが、落とした翅は見つかりませんでした。しかも、3匹が3匹共に翅を落としていたのですから、交尾を了えていたのかも含めて、本当はどのような経緯だったのか疑問が残ります。

8月28日、トゲアリの働きアリが、活動室内でトゲアリの脱翅女王アリを咥えて運んでいました。

8月28日19時37分撮影

活動室の中には24日の時点で、脱翅女王アリが3匹いたわけですが、このトゲアリの働きアリに運ばれていた女王アリを含めて、2匹しか見当たりませんでした。脱翅女王アリの死体も見当たりませんでした。

もう1匹のトゲアリの脱翅女王アリ 19時39分撮影

その運ばれていた女王アリは、やがて放たれて活動室の中を歩いていましたが、しばらくして本巣へと通じるアクリルパイプの中に入って行きました。そして、その先のシリコンホースの中を本巣へと進んで行きましたが、様子を見ているとトゲアリの働きアリが進路を防ごうとしているかに見える場面もありました。ですが、間もなく脱翅女王アリは本巣の中に入って行きました。本巣の中は、トゲアリの働きアリで充満していましたので、その後の動きは観察できませんでした。

アクリルパイプへと入って行く 19時46分撮影
シリコンホースの中を本巣へと進む脱翅女王アリ 19時47分撮影

トゲアリのごみ投下術の謎

8月20日、トゲアリのコロニーT140906-40の活動室に簡易的な飛翔台を設置して以来、開放蓋の上などにトゲアリの生活ごみが載るようになりました。

飛翔台の高さは83cm 8月20日撮影
ごみは撮影後除去した 8月21日6時43分撮影
ごみは撮影後除去した 8月24日8時24分撮影
8月27日15時4分撮影
8月27日15時5分撮影
生活ごみを咥えて飛翔台に上るトゲアリ 8月27日15時17分撮影

これはとても不思議なことです。生活ごみを飛翔台に上って落とすだけなら、真下に落ちるでしょうから、開放蓋には載らないはずです。
トゲアリが、どんなふうに生活ごみを落としたのかを知りたいのですが、まだ観察ができてはいません。

結婚飛行に際しての羽アリの様子を時系列で見る

8月22日2時47分撮影
8月21日3時59分撮影
8月25日4時27分撮影
8月21日5時10分撮影
8月21日6時46分撮影
8月24日8時25分撮影
8月22日2時47分撮影
8月22日4時3分撮影
8月21日21時6分撮影
8月22日2時47分撮影
8月22日4時3分撮影
8月21日21時6分撮影

岡山市の日の出時刻は、8月21日が5時29分、8月25日が5時33分です。
夜の21時頃は、結婚飛行の兆しは見られませんでしたので、トゲアリは夕刻日が暮れて結婚飛行をするのではないことが分かります。
深夜は観察していませんが、3時頃には羽アリたちは既に結婚飛行に向けて動き始めているようです。日の出の1時間半前頃(4時頃)になると、結婚飛行に向けての動きが活発になっています。そして、日の出時刻の1時間半後(7時頃)には、結婚飛行に向けての動きがほぼ見られなくなっています。

今から10年前の2014年に、「トゲアリの結婚飛行に出会いたくて」という題のブログを7回に渡って書いています。その中の第(3)稿では、23時台に羽アリが巣から出てきているところを観察しています。

2014年9月10日23時22分撮影

また、第(4)稿では、1箇所のコロニーで20時台で羽アリを観察しています。

2014年9月12日20時11分撮影

第(5)稿では、4時からの観察で、4時台に多数の羽アリを観察していて、7後頃まで羽アリが巣からで出ています。そして、7時を過ぎると羽アリが少なくなり、8時を過ぎると羽アリが見られなくなっています。

2014年9月13日4時0分撮影

10年の時を経て、トゲアリの結婚飛行に際して、飼育下での羽アリの様子と自然界での羽アリの様子を見比べることができたことは、とても有意義なことのように思います。

飼育下の1コロニーから飛び立った脱翅女王アリの帰還

飼育下の1コロニーから飛び立った脱翅女王アリ(交尾の有無は確認できていない)を元の巣に戻すとどうなるのでしょうか。8月22日に採集した3匹の脱翅女王アリで試してみました。

1匹目 働きアリに囲まれることがあったが、噛み合いは起こらなかった 8月22日14時18分撮影
2匹目 噛み合いは起こらなかった 14時19分撮影
3匹目 溶け込んでいる様子だった 14時22分撮影

この3例を見る限り、飛び立った元の巣の働きアリたちに受け入れられたようです。

下の2つの写真は、2022年にトゲアリの採集地で撮影しました。トゲアリの巣がある樹の上方から幹伝いに下りてきたトゲアリの脱翅女王アリをトゲアリの働きアリが攻撃しているところです。
ちなみに、上掲の3例との違いは、下写真の脱翅女王アリは結婚飛行(受精)を済ませていますが、3例では受精を済ませているのかどうかが不明です。また、3例での脱翅女王アリは、元の巣に戻ったのですが、下写真の脱翅女王アリは、働きアリと同じコロニーなのかどうかが不明です。

2022年9月10日8時31分撮影
2022年9月10日撮影14時48分撮影

飼育下の1コロニーから飛び立った脱翅女王アリの寄生行動

飼育下の1コロニーから飛び立った脱翅女王アリは、寄生行動をするのでしょうか。8月21日の早朝に採集した4匹の脱翅女王アリの内、3匹で試してみました。
寄主は何れも今年新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーです。

① 寄主:BH240518-07の場合

BH240518-07

脱翅女王アリをフィルムケースに入れ、フィルムケースを逆さにして、クロオオアリの飼育ケースのアクセス孔の上に置きました。孔からクロオオアリがフィルムケースの中に入ってきましたが、化粧行為は見られませんでした。

化粧行為をせずにコロニーの中に入って行った 8月21日10時25分撮影
10時25分撮影
クロオオアリの女王アリから終始一方的に攻撃されていた 10時30分撮影
10時36分撮影
トゲアリの女王アリが死亡していた 8月21日14時51分撮影

② 寄主:BH240518-08の場合

このような場面もあったが、化粧行為はしていなかった 8月21日14時4分撮影
14時7分撮影
クロオオアリの女王アリから終始一方的に攻撃されていた 14時10分撮影
14時11分撮影
トゲアリの女王アリが死亡していた 8月21日19時28分撮影

③ 寄主:BH240518-09の場合

BH240518-09
化粧行為が見られた 8月21日15時18分撮影
クロオオアリの女王アリを襲う 15時25分撮影
15時29分撮影
15時32分撮影
15時32分撮影
15時32分撮影
15時42分撮影
右触角を失っていた 15時45分撮影
トゲアリの女王アリが死亡していた 8月21日19時28分撮影

越冬幼虫は何時頃から?

クロオオアリの場合、越冬幼虫は何時頃から見られるのでしょうか。飼育下という条件ではありますが、比較的大きなコロニーのいくつかで観察してみましょう。以下何れも8月21日の様子です。

B15006
BK170530-081
このコロニーでは、小さな幼虫も多数いるが、卵(写真右)も多数見られた B200603-067
B200603-075

こうしてみると、どのコロニーでも共通してほぼ同じ大きさの幼虫が多数見られます。既に越冬幼虫になっているようです。

トゲアリの羽アリが飛翔

少し前からでしたが、トゲアリのコロニーT140906-40の羽アリが活動室アンテグラウンドⅡ型のガラスの側面などに上がって来るようになっていました。

8月19日8時29分撮影

そこで、8月20日、簡易的な飛翔台を作って、アンテグラウンドの中に設置しました。

飛翔台の高さは83cm 活動室は開放蓋なので設置可能だ 8月20日10時06分撮影

観察はその翌日の21日の早朝から始めました。
案の定、羽アリが飛翔台に上ってきていました。4時前の室温は29.5℃でした。

8月21日3時59分撮影

それから1時間ほど経った5時過ぎ、複数の有翅女王アリを部屋の中で見かけるようになりました。

床を歩く有翅女王アリ 5時9分撮影
5時11分撮影
5時11分撮影
シーリングライトに飛んできた有翅女王アリ 5時16分撮影

活動室の中では、複数個所で見られた羽アリの群れが、ほぼ解けていました。

5時21分撮影

人工巣の中は、まだ、少数ですが羽アリがいました。

5時33分撮影
5時33分撮影

それから間もなくして、部屋の中で脱翅女王アリを見かけるようになりました。

5時39分撮影
5時39分撮影
5時41分撮影

やがて夜が明けると、南向きのガラス戸に羽アリが集っていました。

6時13分撮影

8時ごろまでに、部屋の中で、脱翅女王アリは4匹、有翅女王アリは7匹、雄アリは5匹を採集しました。ちなみに、脱翅女王アリですが、交尾を済ませたのかは不明です。

飼育トゲアリの羽アリたち 7月3日以降の様子

直近の飼育トゲアリの羽アリの様子は、こちらをご覧下さい。

羽アリがかなり多くなっている 7月17日撮影
活動室に出手来る羽アリが多くなった 7月27日撮影
活動室内で群れを作るようになった 8月7日撮影
活動室内の群れ 大気圧給水器の傍らで群れていた 8月9日撮影
活動室の中に脱翅女王アリがいた 8月12日撮影
活動室で蜜を与えると羽アリも飲んでいた 8月17日撮影

クロオオアリの働きアリの寿命

T210912-02は、2021年9月16日にクロオオアリのコロニーのBK170530-040に寄生したトゲアリのコロニーです。直近では6月5日のブログで取り上げています。

T210912-02 2024年6月5日撮影

今では、トゲアリの働きアリがかなりの数になっています。

人工巣の中の様子:トゲアリの働きアリばかりに見える この他にも活動室にかなりの数のトゲアリの働きアリがいる 2024年8月9日撮影

そんな中で、寄主であったクロオオアリの働きアリは、活動室アンテグラウンドⅢ型の中にいました。

活動室の中で 8月9日撮影
活動室の中で 8月9日撮影
活動室の側面横にクロオオアリの働きアリの群れがあった 8月9日撮影

しかし、クロオオアリの個体数は明らかに少なくなっています。
ところで、これらの働きアリの中で最も若い働きアリは、幼虫で越年し、寄生の翌年(2022年)の7月ごろまでに羽化したと考えられます。そこで、このコロニーのクロオオアリの働きアリの寿命は、短く見積もっても、8月時点で2年強になります。

関連ブログ
①「働きアリの寿命」(2012年8月31日)
 「1年以上(生存中)」
②「1匹だけ育った働きアリ」(2021年8月31日)
 「成虫になって1年(生存中)」
③「働きアリの寿命」(2013年3月25日)
 「今年で2回目の春を迎えようとしている(生存中)」
 「約20ヵ月生きている(生存中)」
④「働きアリの寿命(その2)」(2013年6月10日)
 「23ヵ月間(確定)」「3年目を越えるのはもう目前(生存中)」
⑤「働きアリの寿命(その3)」(2014年6月19日)
 「最長で2年と11ヶ月近く生きていた(確定)」
⑥「外勤が少ないトゲアリ」(2020年5月29日)
 「最短でも11ヶ月ほど(生存中)」
⑦「トゲアリの様子 2020年10月」(2020年10月15日)
 「1年と4ヶ月以上に渡って生きている(生存中)」
⑧「ほぼ2年間生きているクロオオアリの働きアリ」(2021年5月31日)
 「ほぼ2年間生きている(生存中、例外的)」