月別アーカイブ: 2025年9月

トゲアリの寄生の第一段階 頭部が落とされるのはいつ?

これまでの観察によると、トゲアリの女王アリは、宿主の女王アリの腹面から頚に咬みついて寄生を開始するようです。そして、そのままの体勢で何日も過ごすのですが、やがて宿主の女王アリの頭部が落とされます。それが、寄生成功の第一段階と言って良いでしょう。
では、宿主の頚に咬みついてから、だいたい何日ぐらいで、宿主の女王アリの頭部が落ちるのでしょうか。観察日が実際に頭部が落ちた日とは限りませんが、宿主がクロオオアリの場合、以下に記載してみます。

頚に咬みついた日 頭部が落ちた観察日 その間の日数
20250912 20250921 9
20250913 20250920 7
20250914 20250920 6
20250915 20250920 5
20250916 20250924 8
20220912 20220918 6
20220913 20220917 4
20220913 20220922 9
20220913 20220917 4
20220919 20220929 10
平均値 6.8

再考 トゲアリの寄生時期と成功率の関係は?

昨年の9月17日のブログ「一時的社会寄生の試みを継続 寄生時期と成功率の関係は?」で、次のように書いています。

「2018年の場合は、トゲアリの女王アリを9月19日に採集し、3日後の22日に寄生を試みています。サンプルは1例で、寄生に成功しています。
2021年の場合は、トゲアリの女王アリを9月12日に採集し、4日後の16日に寄生を試みています。サンプルは2例で、1例が寄生に成功しています。
2022年の場合は、トゲアリの女王アリを9月10日に採集し、2日後3日後の12日・13日に寄生を試みています。サンプルは5例で、4例が寄生に成功しています。」

そして、2024年については、トゲアリの女王アリを9月8日に採集し、5日後の13日に1例、7日後の15日に4例、8日後の16日に6例に寄生を試みています。11例ともに寄生に失敗しています。
今年の場合は、トゲアリの女王アリを9月9日に採集し、2日後の11日に4例、3日後の12日に4例、5日後の14日に2例、6日後の15日に3例、7日目の16日に6例に寄生を試みました。その結果は、2日後は0/4、3日後は2/4、5日後は1/2、6日後は1/3、7日後は1/6で寄生に成功しています。
以上は何れも、トゲアリの女王アリを直接クロオオアリのコロニーに入れるという方法をとっています。
そこで、今年の2日後の0/4を例外と考えれば、上記の寄生方法ではと言う条件付きですが、昨年の9月17日のブログで示唆したように、「結婚飛行後、より早い時点で寄生を試みる方が、寄生の成功率は高い」と言えそうです。

トゲアリの寄生の試み 5例で第一段階が成功

昨年新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーを多数飼育しています。今年は、これらのクロオオアリのコロニーに、先日9月9日に採集したトゲアリの女王アリを寄生させることにしました。
寄生の試みは全部で19例行いました。いずれも寄生を始めさせる前に、1・2匹のクロオオアリの働きアリとトゲアリの女王アリをフィルムケース等の中で接触させ、化粧行為をするように促しました。ただ、トゲアリ側の各個体による個性とも言えるものが同じではなく、一概に同じ程度、化粧行為が行われたわけではありません。また、化粧行為を行っても、トゲアリの女王アリがクロオオアリのコロニーに進入した際は、全ての例でクロオオアリから攻撃を受けていました。

以下は、寄生が成功した5例です。

① 宿主BH240518-04への寄生(T250909-01)

T250909-01がフィルムケースから宿主へ進入した直後 9月12日14時02分撮影
T250909-01がクロオオアリから攻撃を受ける 9月12日14時06分撮影
化粧行為を行うT250909-01 9月12日14時7分撮影
クロオオアリの女王アリの背面から、T250909-01が頚に咬みついている 9月12日15時44分撮影
2日後の9月14日 頚に咬みついたまま 18時59分撮影
クロオオアリの女王アリは死んでいる 頚はまだ落とされていない T250909-01は頚に咬みついていない 9月20日17時42分撮影
頚が落とされていた 9月21日20時9分撮影

② 宿主BH240518-09への寄生(T250909-02)

フィルムケースの中のクロオオアリはBH240518-09の働きアリ 9月12日16時10分撮影
BH240518-09の中へT250909-02が入って行った 9月12日20時36分撮影
攻撃を受けるT250909-02 9月12日20時38分撮影
翌日13日の様子 T250909-02がクロオオアリの女王アリの頚に腹面から咬みついている
9月14日 前日同様、T250909-02がクロオオアリの女王アリの頚に腹面から咬みついている 19時1分撮影
クロオオアリの女王アリはまだ生きている 9月16日9時30分撮影
クロオオアリの頭部が切り落とされていた 9月20日17時30分撮影

③ 宿主BH240518-22への寄生(T250909-03)

この後フィルムケースの中にT250909-03とクロオオアリの働きアリ2匹を入れる 9月14日19時10分撮影
フィルムケースの蓋を取って、フィルムケースを宿主の飼育ケースのアクセス孔の上に被せる 9月14日21時7分撮影
攻撃を受けるT250909-03 9月14日21時8分撮影
T250909-03がクロオオアリの女王アリの後脚に食いついた 9月14日21時11分撮影
T250909-03がクロオオアリの女王アリの背面に馬乗りになっていた 9月14日21時20分撮影
T250909-03はクロオオアリの女王アリの背面から腹面へ移り、頚に咬みついている 9月14日21時26分撮影
T250909-03がクロオオアリの女王アリの頚に腹面から咬みついている 9月16日9時32分撮影
クロオオアリの女王アリの頭部が落とされていた 9月20日17時31分撮影
ゴミ置き場にクロオオアリの女王アリの死体があった 9月23日9時13分撮影

④ 宿主BH240518-25への寄生(T250909-04)

いったんはフィルムケースに入れたものの、接触空間を狭めるために、入れ物を換えた 9月15日15時31分撮影
フィルムケースの蓋を取って、フィルムケースを宿主の飼育ケースのアクセス孔の上に被せた 9月15日16時34分撮影
攻撃されるT250909-04 9月15日16時36分撮影
T250909-04がクロオオアリの女王アリの後脚に咬みついた 9月15日16時49分撮影
クロオオアリの女王アリがT250909-04に攻撃している 9月15日16時50分撮影
女王アリの両者の闘いは終わったかに見えたが…… 9月15日16時52分撮影
T250909-04の方から再び闘いを始めた 9月15日16時52分撮影
T250909-04はクロオオアリの女王アリの腹面を捉えた 9月15日16時52分撮影
頚に咬みついた 9月15日16時54分撮影
翌日の9月16日 頚に咬みついている 9時38分撮影
頭部が落とされていた 9月20日17時30分撮影

⑤ 宿主BH240518-29への寄生(T250909-05)

この後フィルムケースの中にT250909-05とクロオオアリの働きアリ2匹を入れる 9月16日9時10分撮影
宿主の中に入るT250909-05 9月16日14時16分撮影
女王アリ同士で闘いが起こった 9月16日14時18分撮影
9月16日14時18分撮影
両者はいったん別れた 9月16日14時18分撮影
T250909-05がクロオオアリの女王アリの背面から頚を狙っている 9月16日14時19分撮影
T250909-05はクロオオアリの女王アリの腹面に移動 9月16日14時20分撮影
腹面からクロオオアリの女王アリの頚に咬みついた 9月16日14時20分撮影
4日後も頚に咬みついている 9月20日18時2分撮影
クロオオアリの女王アリはまだ生きていた 9月21日20時10分撮影
クロオオアリの女王アリは既に死んでいた 頭部はまだ落とされていない 9月23日9時11分撮影
T250909-05は、クロオオアリの女王アリの腹面に留まっていた 9月23日9時11分撮影
頭部が落とされていた 9月24日13時29分撮影

クロオオアリ10コロニーの幼生虫の様子(9月16日)

昨年の5月18日に新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーうち、6コロニーはコンクリート製の人工巣に移転させています。これら6コロニーを含めると、クロオオアリについては、現在10コロニーを飼育しています。
このブログでは、9月16日のそれら10コロニーの様子(特に幼生虫の様子)を記録しておきます。

B15006(2015年創巣)

とてもたくさんの幼虫が見られる 何れも越冬幼虫になるようだ
卵もあった
少し大きめの幼虫もいた

BK170530-081(2017年創巣)

越冬幼虫なのだろう
大きめの幼虫がいた

BH210523-30(2021年創巣)

繭も見られる

BH210523-34(2021年創巣)

繭も見られた

BH240518-08(2024年創巣)

繭が多めのようだ

BH240518-10(2024年創巣)

繭が多めのようだ
かなり大きめの幼虫がいた

BH240518-28(2024年創巣)

BH240518-40(2024年創巣)

BH240518-41(2024年創巣)

BH240518-47(2024年創巣)

参照
越冬幼虫は何時頃から?」(2024年8月21日)

9月16日時点のトゲアリの様子(特に幼生虫)

9月16日時点での飼育している全てのトゲアリの様子、特に幼生虫の様子を記録しておきます。

T140906-40(2014年寄生)

T180919(2018年寄生)

T210912-02(2021年寄生)

T20220910-44(2022年寄生)
クロオオアリの働きアリが3匹生きています。

1匹目
2匹目
3匹目

T20220910-53(2022年寄生)
クロオオアリはいません。

T20220910-54(2022年寄生)
クロオオアリはいません。

昆虫を分解している まだ幼虫を育てているのだろうか

T20220910-65(2022年寄生)
トゲアリの働きアリや幼生虫はいません。クロオオアリがまだ多く生きています。

ところで、2022年寄生の4コロニーの宿主は、何れも2021年に新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーでした。この宿主の最も若い個体(クロオオアリの働きアリ)は2023年に羽化しています。興味深いのは、クロオオアリの寿命という点では4コロニーともに同じはずですが、生き残っているクロオオアリの個体数には大きな違いがあります。
今回の事例に限ってと言うことにはなりますが、トゲアリのコロニーの増大と宿主のクロオオアリの働きアリの寿命との間には、確かな関連がありそうです。

トゲアリの女王アリを採集(2025年)

9月9日、トゲアリの新女王アリを採集するために、滋賀県彦根市内の2012年以来観察・採集している場所に行きました。ちなみに、昨年は、一日早い9月8日に、同じ場所で、7時半頃から10時半頃までの3時間で、トゲアリの新女王アリを53匹採集しています。

8時半頃、採集地に着いてすぐに、トゲアリの脱翅女王アリを見つけました。

最初に見つけた脱翅女王アリ 9月9日8時30分撮影

この後、主に3箇所で新女王アリを採集しました。

一番多く採集できた場所 21匹採集 ここはA巣があった場所から林道を上がったところ
7匹採集 上の写真の場所より少し林道を上がったところ
10匹採集 写真の中央の木にかつてA巣があった この他にこの場所より林道を下った場所で1匹採集している

2021年以来観察をしているD巣では、結婚飛行を終えた女王アリは見当たりませんでした。

D巣がある木 この日は結婚飛行はなかったようだ
樹洞の中の様子 9時2分撮影
羽アリが多数見える 9時3分撮影
結婚飛行はこれからのようだ 9時6分撮影

トゲアリの新女王アリの採集は、この1日で終えることにしました。8時半頃から10時頃までの1時間30分ほどの時間で、39匹採集しました。その内、1匹は有翅女王アリでしたが、しばらくすると脱翅していました。

39匹を採集
ケースの中で脱翅した女王アリ 9月9日16時56分撮影

ところで、昨年の気象は次のようでした。
      日 (最低気温 / 最高気温) 昼(06:00-18:00) 夜(18:00-翌日06:00)
 前日  9月7日  (23.1 / 32.7)       晴         晴
 採集日 9月8日  (24.4 / 33.8)       晴         晴
今年は次のようです。
      日 (最低気温 / 最高気温) 昼(06:00-18:00) 夜(18:00-翌日06:00)
 前日  9月8日  (26.1 / 32.6)   曇時々晴、雷を伴う    晴時々曇
 採集日 9月9日  (25.9 / 34.0)   晴後時々曇、雷を伴う   晴時々曇

ボカシミジングモを撮る 獲物の躯体に損傷見当たらず

今年の8月22日のブログ「ミジングモが巣の中から、狩ったクロオオアリを運び出した」と同じ場所(B200603-075)で、今日、クロオオアリが4匹、宙吊りになっているのを見つけました。その内3箇所には、ミジングモがいました。ボカシミジングモのようです。

9月7日8時22分撮影
9月7日8時23分撮影
9月7日8時23分撮影

あとの一箇所には、ミジングモはいませんでした。写真撮影の時には、気づかなかったのですが、写真には、小さな虫が3匹写っていました。その虫には翅があるようで、カメムシのようにも見えます。クモではなく、昆虫のようです。この生き物はいったい何なのでしょうか。

9月7日8時23分撮影

3箇所のボカシミジングモをフィルムケースで捕獲しました。

9月7日12時3分撮影

以下の写真は実体顕微鏡で撮影したものです。

一番大きいボカシミジングモ 格子状の1目盛は1mm 脚部を除いた体長は2.8mm程 腹面撮影
1番小さいボカシミジングモ 格子状の1目盛は1mm 脚部を除いた体長は2mm程 背面撮影
中ぐらいの体長のボカシミジングモ 円形の1目盛は0.5mm 撮影時には死んでいた 13時42分撮影

ところで、宙吊りにされたクロオオアリは、肉眼で見た限りでは躯体に損傷がないように見えるのですが、そのことを調べるために、実体顕微鏡で拡大して見ることにしました。

側面
背面
腹面

実体顕微鏡で見る限りでは、やはり躯体に損傷は見当たりませんでした。
そこで、疑問に思うのですが、ミジングモはクロオオアリの何を食べているのでしょうか。あるいは、子クモを育てるために使うのでしょうか。

ところで、「ミジングモが巣の中から、狩ったクロオオアリを運び出した」のが、ミジングモの一般的な習性なら、ミジングモはクロオオアリの巣の中に入っても、気づかれないか、少なくとも襲われないのでしょうか。そこで検証してみることにしました。生きているボカシミジングモ2匹を、クロオオアリの2つのコロニーの中にそれぞれ強制的に入れてみました。

すぐさま、クロオオアリに捕獲されてしまった。
2匹目もクロオオアリに捕獲されてしまった。

この実験では、ミジングモをいきなりクロオオアリの働きアリが多数いる中に入れたので、自然界にはない状況であったことを考慮に入れなければならないのですが、クロオオアリはミジングモに気づくことができ、捕獲することができることが分かります。

15時半頃に再び宙吊りがあったB200603-075の巣口の辺りを見ていると、ボカシミジングモが1匹、獲物なしでクモの糸にぶら下がっていました。明日以降も、観察の機会がありそうです。

15時36分撮影

巣口は移動する(追記2025年9月1日)

巣口が移動することについては、これまでに次のブログで触れてきました。

移植2・3回目のその後」(2025年5月19日)
移植2・3回目に新たな巣口」(2025年7月3日)
巣口は移動する」(2025年7月8日)

9月1日、移植3回目(B200603-075)の巣口がまた移動していました。

9月1日8時51分撮影

写真の上方右にこれまでは巣口があったのですが、巣口があった場所は埋まっていました。下方左に新たに巣口ができていて、土を巣口から運び出す働きアリがいました。