これまでに2度採集旅行に出かけていますが、まとまった数の新女王アリは採集できずじまいでした。移動距離が片道500kmあり、これまでに2000km車で走ったことになります。三度、同じ採集場所に行きたいところですが、そうすると走行距離が3000kmにもなり、直線距離にして沖縄県の那覇から北海道の稚内までの距離を更に500km超えてしまいます。これはさすがに遠すぎます。
もう既に6月に入っていますから、クロオオアリやムネアカオオアリの結婚飛行に出会うには、標高が高いところへ行かざるを得ません。比較的近場で標高が高いところということで、中国山地へ行くことにしました。
6月10日は全国的に良い天気になり、気温も上がる予報でしたから、10日と11日にかけて採集旅行に出かけました。初めに鳥取県にある大山へ向かいました。10日は朝早くから出かけたものの、事情があり、大山寺近辺についたのは、もう日が暮れかけた19時少し前でした。豪円山(ごうえんざん)の麓に車を止め(標高812m)、スキー場の芝生を歩いてみましたが、クロオオアリについては、働きアリさえ見つけることができませんでした。あきらめて車に乗ろうとした時、翅のついたクロオオアリの女王アリが1匹地面を歩いていました。クロオオアリの働きアリの姿こそありませんでしたが、近くにクロオオアリが棲息しているようです。ただ、この辺りは、クロオオアリは極めて少ないようです。大山寺近辺を他に3ヶ所探してみましたが、1匹もクロオオアリの働きアリを見つけることはできませんでした。
帰路、大山桝水高原スキー場(標高710m前後)にも立ち寄りましたが、ここにもクロオオアリの働きアリの姿はありませんでした。
翌11日は、岡山県北の蒜山高原で採集を行いました。
蒜山高原でおそらく最も人が集まるヒルゼン高原センターの駐車場脇を調べてみましたが、クロオオアリの姿はありませんでした。そこで、少し上方へと続く自動車道を走り、側道の駐車スペースに車を止めました(標高535m)。その脇には、幅の広い自転車道と歩道があり、花が咲いている草木がありました。舗装された道や道脇のスペースや、人工的な植栽や自然の花々、これらはクロオオアリが棲息し易い環境です。
案の定、クロオオアリの巣があちこちにありました。
この採集旅行で初めてのクロオオアリとの出会いでした。ただ、まだ時刻が早かったので(5時半頃)、巣穴を覗き込むだけでは結婚飛行を終えているかどうかは分かりません。しばらくの間は、新女王アリが地面を歩いていないか見て回りましたが、新女王アリの姿はありませんでした。昨日、結婚飛行が行われておれば、まだ地面を歩いている新女王アリがいると思われますが、いないということは、このあたりでは昨日は結婚飛行が行われなかったということになります。
そうすると、何日か前に結婚飛行のピークが終わってしまったとも考えられるわけで、不安でした。
そこで、巣穴が大きく開いている巣(結婚飛行が行われる頃は巣穴が大きくなり、その後は巣穴が小さくなるか、なくなることが分かっているため)を崩してみました。すると、雌雄の羽アリが出てきました。まだ、羽アリが巣の中にいたのです。
この場所には、また夕方に訪れることにして、ヒルゼン高原センター近辺2ヶ所を探索した後、車で県道422号線を東へと走りました。途中休憩所に車を止めて、クロオオアリを探すとすぐに見つけることができました。蒜山高原には、クロオオアリが多数棲息していることが分かってきました。
では、ムネアカオオアリはというと、この休憩所で初めて見つけました。
巣の在りかを探そうと思い、腹部が膨れているムネアカオオアリの後をつけてみました。すると、落ち葉などが積もっている場所で姿を消しました。
巣穴があるようには見えません。けれどもこれまでの経験から、ここに巣に通じる入り口があるようにも思えました。そこで、軽く掘り返したのですが、ムネアカオオアリは1匹も出てきませんでした。
次に車を止めたのは、百合原休憩園地(標高528m)です。しばらく探していると、掘り出した粒状の土がある穴を見つけました。
上の写真には写っていませんが、この穴を掘っているクロオオアリの女王アリがいました。この採集旅行で初めて出会った女王アリです。今穴を掘っている最中であることから、この女王アリは昨日結婚飛行を行ったと考えられます。辺りを注意深く探しましたが、見つかった女王アリはこの1匹だけでした。
次に道の駅「蒜山高原」(標高510m)へ行きました。百合原休憩園地に近いこともあり、この辺りでも昨日結婚飛行が行われた可能性が高いと考え、まだ地面を歩いている女王アリを探して、駐車場周辺を歩きましたが、見つけられませんでした。車のある場所に戻った時、すぐ足下の地面に穴を見つけました。クロオオアリの新女王アリが掘った穴に似ています。草の細い茎を穴に突っ込んでいると、クロオオアリの女王アリらしきものが見え、やがて穴から出てきました。
その目で見てみると、次から次に穴を見つけることができました。少し深めの穴の場合、薬さじで穴の回りを少し広げて女王アリを穴から追い出しました。
穴の中にいた女王アリは、穴を掘っている途上でしたが、3ヶ所で穴の深さを測ってみました。すると、20mm、35mm、18mmでした。
この道の駅では、9時過ぎから10時40分頃の間に、8匹のクロオオアリの女王アリを採集しました。内、地上を歩いていたのが2匹でした。
午後になり、もう一度、早朝訪れたヒルゼン高原センターの上方の場所に行きました。羽アリがいるかどうかを調べるために崩した巣を見てみると、復旧が進んでいて、羽アリが地上に出ていました。
その後もう一度、百合原休憩園地に立ち寄りました。車を降りてすぐに歩いているクロオオアリの女王アリを見つけました。この後3匹、やはり歩いているクロオオアリの女王アリを見つけました。
再び、道の駅「蒜山高原」に16時半頃までいましたが、新たに女王アリは見つけられませんでした。夕方になり、三度、早朝訪れたヒルゼン高原センターの上方の場所に行きました。羽アリがいるかどうかを調べるために崩した巣とは別の巣で、羽アリが巣から出ていました。下の写真は3ヶ所の様子ですが、極く近くなので、同じコロニーと思われます。
ところで、17時5分ごろ、この場所で、ムネアカオオアリの新女王アリが歩いているのを見つけました。この場所では、ムネアカオオアリの働きアリの姿はありませんでしたので、少し意外でした。ムネアカオオアリの女王アリに出会ったのは、この採集旅行を通じてこの1匹だけでした。
ムネアカオオアリについては、県道422号線沿いの複数の場所で、少数ですが働きアリを見ています。蒜山高原にもムネアカオオアリが棲息していることが分かります。
今回の採集旅行では、クロオオアリの女王アリは合わせて13匹採集できましたが、結婚飛行のピークについては、この蒜山高原ではもう既に終わっていたと思われます。それは、多くのクロオオアリの巣では、夕刻になっても巣口に羽アリが現れなかったからですし、巣口が広めの巣が少なかったからです。
こうして、3度目の採集旅行が終わりました。来年からは、蒜山高原も採集地に加えようと思います。
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