NHK Eテレ なりきり! での道しるべのこと

先日の4月15日放送のNHK Eテレ「なりきり! むーにゃん生きもの学園『アリになりきり』」で、道しるべについて触れている箇所があります。(再放送は、4月20日(木)午後3:45~午後4:00)

①(白い紙のようなものの上を歩くアリの跡を追ってピンク色の線が引かれていく映像を映しながら)
「最初に食べ物を見つけたアリは、お尻の先んちょから、フェロモンをチョロチョロ出しながら巣に戻る」「うん」

②(巣と食べもの結ぶピンク色の点線を書き込んだ写真を映しながら)
「そのフェロモンを辿るちゅーと」「どれどれ、あー、道ができた」

③この後、アリになりきって、道しるべを体験します。体育館に草むらの小道具を5つ設置し、その中の一つの裏側にキャンディーを置いておきます。最初、3人の小学生が、そのキャンディーを探しに行きます。その際、サンダルの裏面にスタンプを貼り付け、歩くと白い模造紙に足跡がつくようにしておきます。スタートし、1人がキャンディーを見つけます。この子は、自分が歩いた足跡のスタンプに沿って元の場所に戻っていきます。(ナレーション:「キャンディを取ったら、自分が残したフェロモンスタンプを目印に巣まで帰ってね」

この放送の内容について、私の考えを記しておきます。
⑴ 上記①の映像についてですが、「お尻の先んちょから、フェロモンをチョロチョロ出しながら」という説明がつけられていますが、そうしている様子が見受けられません。腹部の先が白い紙に触れていませんし、所々で白い紙に触れるように腹部を動かしている様子もありません。それでも、フェロモンを出しながら歩いているというのならば、空中からフェルモンを発射していることになります。わずかなら白い紙(地面)に付くでしょうが、とても効果の低い方法になります。

⑵ ①と②のアリの種類は違うようです。そのことは問題ではありませんが、この2種のアリは、餌を見つけた帰路に道しるべをつけながら帰り、その道しるべに沿って再び餌にたどり着くと言っているのです。

⑶ ③からは、アリは餌探しをする時、常にフェロモンによる道しるべを付けながら歩いているということになり、その道しるべがあるから、餌を見つけた時は迷わずに巣に帰ることができるということになります。でもそうなのでしょうか。長時間に渡ってあちこちを歩き回って餌探しをしていると、フェロモンはやがて尽きてしまうでしょうし、そうでなくても、随分と時間が経過した道しるべのフェロモンは、もう感知できないほど薄れているはずです。仮にそうでなくても、確かに「餌を見つけた時は迷わずに巣に帰る」ことはできますが、あちこち歩いていたのですから、無駄にとても大回りをして巣へと帰ることになります。

私は、クロオオアリに限ってという限定付きですが、次のように考えています。(まだ仮説の段階ですが)
⑴クロオオアリは、自分たちの生活圏内で餌探しをしているので、餌を見つけた時には、道しるべはなくても、自分の巣に帰ることができる。つまり、餌探しをしながら、帰路のために道しるべを付けているのではなく、その必要もない。
ミツバチは、餌を探す際、空中に道しるべを付けようがなく、それでも、餌を見つけて自分の巣に帰ることができるが、アリの場合も同様と考える。

⑵ 餌を探し当てて巣に帰る際にも、道しるべは付けない。帰路は、餌を探していた道とは違った場所を歩いていて、かなり迷っていることもあるが、いずれにしても腹部を地面をつける行為は見られない。
それでも、帰路に道しるべを付けているとした場合、説明しにくいことがある。というのは、餌を見つけて戻ってきたアリが、仲間を連れて再び出かけるまでに10分から15分程経過する。例えば、真夏のかんかん照りの日だったなら、その間にフェロモンはほとんど蒸発してしまうのではないだろうか。

⑶ 仲間を連れて再び出かけるクロオオアリは、観察によれば、直前に戻ってきた道に沿って歩かない。先程の帰路よりは、多くの場合近道になっている。この再度餌場に出かける時に、初めて地面に道しるべを付ける行為を見ることができる。その道しるべを付けながら餌場に向かうアリは、数匹の中の必ず1匹のみで、先頭を行くアリである。この1匹のアリが、先程餌を見つけたアリだと考えられる。
先導する1匹のアリに数匹が右往左往しながら付いていくわけだが、その時に道しるべフェロモンが道しるべとして使われている。仲間が1匹の先導者の直後についていくのだから、フェロモンはまだ蒸発しないで感知できるのだろう。アリの視力はとても悪いようなので、他の動物のように、先を歩く仲間の姿は見えず、フェロモンが唯一有効なのではないだろうか。

これまでの観察から、以上のように考えていますが、餌を見つけた帰路に道しるべを付けないとしたら、餌の場所をどのように記憶しているのか、その仕組みについてはまだ仮説さえ考えられていません。ミツバチの場合はというと、道しるべを空中に印すことなく、その餌場を記憶して仲間に伝えているのですが……。
クロオオアリはいったいどのようにして餌場を記憶するのでしょうか。明らかにしたいものです。

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  1. ピンバック: ヘウレーカ! なぜアリは行列するのか? | anttech.jp

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