「ありの行列」を考えるブログシリーズの仮説
⑴最初に餌を見つけたクロオオアリは、帰路道しるべを付けずに巣に戻る。
⑵⑴のクロオオアリは、仲間を連れて餌場へ向かう。その際、道しるべを付けながら進み、その匂いを追いながら、仲間がついてくる。
⑶その帰りも、いずれのクロオオアリも道しるべは付けずに帰巣し、その後餌場へ向かう際、新たな仲間を引き連れて出かける際には、道しるべを付けながら進み、その匂いを追いながら、新たな仲間がついてくる。
今回のブログでは、上記仮説の⑴⑵⑶に言及します。
4月18日、上記仮説を確かめるために観察を行いました。
B巣(右の欄の固定ページ内「参照ページ」を参照)からは、カラスノエンドウの保護区との間を往復するクロオオアリがたくさんいます。これらのアリは、既に目的を持って行動(既存の場所からの蜜の運搬)しているので、実験の対象から外そうと考えました。実験の対象としては、餌探しをしているアリを用いたいと考えました。
そのことをはっきりとは確かめることはできませんでしたが、B巣から4.4m程離れたところを歩いている腹部が膨れていない1匹のクロオオアリを見つけました。C巣からも近いので、C巣のアリかも知れません。このアリのそばに蜜器を持っていき、蜜器に登らせてから蜜器を地面から持ち上げました。すぐに蜜を飲み始めました。
蜜器に登らせた場所に境界杭を打ち、その蜜器を被せました。やがて腹部が膨らむと、帰路につきました。迷わずに巣に戻れるでしょうか。
下の写真は、この後に行った他の観察の後に撮影したものですが、このアリが帰路に随分と迷った足跡を記録しています。
写真右側にある境界杭に蜜器を載せています。帰路の30秒ごとにアリが歩いた跡に鉄砲串を地面に差し込んでいます。このアリは、B巣のアリであったことがこの後分かるのですが、B巣とは全く反対側の境界杭の左側をほぼ15分間も歩き回っていました(境界杭から左に最も離れた地点でおよそ3mありました)。その後は、もとの境界杭があった辺りから、今度はあまり迷わずに、ほぼ最短距離でB巣へと向かいました。
B巣の近くまでたどり着いた時、仲間のアリ1匹と出会い、蜜を分け与えました。
それからすぐ近くの巣に入っていきました。
ここまでが、帰路の観察になるのですが、ほぼ15分間も迷っていた間、フェロモンによる道しるべを付けていた様子はありませんでしたし、それでももし、道しるべを付けていたとすれば、たいそうな迷い道になります。その後、ほぼ迷わずに帰路につきましたが、道しるべを付ける動作は観察していません。また、その後、ほぼ迷わずに帰路についたとは言え、そのルートは、このB巣のアリたちがよく使っていた道だったということでもありません。
やがて、先程入っていった巣口の近くからクロオオアリが出てきました。
2〜3匹程度であったように思います。これまでの観察と比較すると少ない数でした。(確言はできませんが、巣に戻る前に仲間のアリに蜜を分け与えましたので、巣に戻ってからは他の仲間に残りの少しの蜜を分け与えたことになり、このことと関係があるのかも知れません)この集団を追っていたのですが、他に準備をしなければならないことがあったために、すぐに見失ってしまいました。
ところが、しばらくして、蜜器の方を見ると、クロオオアリが2匹来ていました。
この蜜器の辺りを歩くクロオオアリはほとんどいませんでしたので、偶然2匹がほぼ同時に蜜を見つけたとは考えられません。この2匹はどうやら先程の一群のアリのようです。
この2匹が巣に戻っていく様子を見ると、ほとんど最短距離で戻っていきましたが、道しるべを付けている様子はありませんでした。
やがて1匹が巣から出てきました。このアリの後を追ってみると、道しるべを付けることなく、かなり早足で迷う様子もなく、蜜器へたどり着きました。後を追う仲間はいませんでした。
ところが、それから2分程して、先程の巣口近くから、今度は少しまとまった数のクロオオアリの一群が出てきました。1匹のアリが、数歩歩いては一瞬止まり、その瞬間に腹部を曲げて道しるべを付けながら歩いていきました。
やがて、多くのアリが蜜器に着きました。
道しるべを付けながら歩くのは、仲間を引き連れて餌場へと向かう時のようです。