すぐに決着がつくと思っていたが、1時間経っても大きな変化はなかった。ムネアカオオアリの女王アリの方は、ひっくり返ったままで、トゲアリが上に乗っている。ムネアカオオアリは、ずっと頸部を咬まれているので、苦しそうには見えたが、触角は良く動いている。今すぐ死ぬような気配はない。周りにいる働きアリは、自分の女王アリの腹部をなめたりしているが、トゲアリに対してもその腹部や胸部を同じようになめている。まるで、両者の女王アリを一体のものとして認識しているかに見える。
夜遅くになっても、トゲアリがムネアカオオアリの頸部を咬んだままだった。ただ、ムネアカオオアリは元気なようで、起き上がっていて、歩いて向きを変えたりした。トゲアリの女王アリがムネアカオオアリの女王アリに咬みついてから、14時間半程経過していた。
いったいいつになったら、ムネアカオオアリの女王アリは息絶えるのであろうか。ひょっとすると、明日の朝までには決着がついているかも知れない、そう思いながら、この日の観察は終えることにした。