9月28日のブログで、飼育環境下のクロオオアリの場合、幼生虫が既に越冬様態に入っていると書きました。それから1ヶ月が経ちましたが、既に昆虫などのタンパク源はほとんど食べないでいます。下の写真は、アンテグラウンドⅠ型に繋げている大家族のクロオオアリB15006のコロニーに、大型のクモを与えた後の様子ですが、ほとんど解体もされていません。

それでは自然界のクロオオアリのこの時期の食性はどうなっているのでしょうか。たまたまですが、10月23日に、昆虫の死骸を運んでいるクロオオアリを見つけました。


自然界では、クロオオアリはまだ、昆虫を採取していることが分かります。
10月26日にも、クロオオアリが白い何かを運んでいるのを見つけました。

いったいこれは何なのでしょう。カイガラムシのようにも思えるのですが。
そこで、ちゃっかりと横取りしてしまいましょう。そして、実体顕微鏡で見てみましょう。


どうやら生き物ではないようです。少なくともカイガラムシではないようです。そこで断面を見て生き物かどうか確かめましょう。

断面も表面と同じ物からできているようです。また、カッターで切断する時、硬くはないようでしたが、湿ってもなく、粉がわずかに飛び散りました。これは、いったい何なのでしょう。
それでも、生物由来のものなのかも知れません。動植物の躯体の一部であったり、排泄物であったり……。
とにかく、この物が、クロオオアリにとってどんな利用価値があるのか、不思議です。
では、こんな実験をしてみましょう。冒頭で紹介したB15006に2つに切断したこの白い物体を与えてみます。B15006のアリたちは、この白い物体に何か関心を示すでしょうか。


2日後に見ると、白い物体はケースから無くなっていました。では、どこに運ばれたのでしょうか。アンテグラウンドⅠ型の中をよく見ると、大型のクモの横に置かれていました。それが、このブログの冒頭の写真に写っています。結局この1つしか見つかりませんでしたので、もう一つがどこに運ばれたのかは分かりません。もし、巣に運ばれたとしたら、その白い物体を巣の中から捜し出すことはまずできないでしょう。ですが、そのように考えるよりも、白い物体の1つが、ごみ捨て場になっている場所に置かれていたことから、B15006のコロニーには、この白い物体は利用価値がなかったと考える方が自然でしょう。
ところで、ずっと以前のブログ「アリ日記 2012/06/06〜08(4)クロオオアリ・ムネアカオオアリの食性」で、この度の白い物体と良く似た物体について触れています。

この白い物体の正体が、やがて分かる時が来れば良いのですが。