ある方から次のようなコメントをいただきました。
「昔、野外でトゲアリの巣をまるごと採集しましたが、そのコロニーには女王が3匹いました。以前、結婚飛行後の新女王がクロオオアリの巣口周辺に複数集まってきている光景を見たことがあります。推測ですがトゲアリの多雌は多くの雌が同じ寄生先に侵入した結果、成立したものと考えてます。
現在、トゲアリ新女王がクロオオアリ女王の頭を落としたとのことですが、このタイミングで更に女王を複数投入すれば多雌になると思います。これは自分もチャレンジしたことがないので断定できませんが…」
そこで、トゲアリの多雌コロニーを作る試みをすることにしました。今回は、「トゲアリ新女王がクロオオアリ女王の頭を落としたとのことですが、このタイミングで更に女王を複数投入」するのではなく、最初から複数匹のトゲアリの女王アリを入れることにしました。つまり、「結婚飛行後の新女王がクロオオアリの巣口周辺に複数集まってきて」、その後間もなく複数匹のトゲアリの女王アリがクロオオアリの巣の中に入ったと想定してのことです。頭が落ちてからではありません(頭が切り落とされるまでには何日か掛かることが分かっています)。
実は2013年の9月27日にも同様の試み「トゲアリの女王アリを2匹入れると」をしています。今回は、4匹のトゲアリの女王アリを寄生させます。
9月23日、寄主をクロオオアリのコロニーS/N:BH210523-60(新女王アリを昨年の5月23日に採集)とし、トゲアリの新女王アリT20220910-1とT20220910-2とT20220910-3とT20220910-4(何れも9月10日採集)を寄生させました。


T20220910-1を飼育しているクリアカップの中にクロオオアリの働きアリを1匹入れたのですが、互いに接触を避けていました。T20220910-2でもクロオオアリの働きアリとの接触を避けているようでしたので、化粧行為がないまま、順次2匹をBH210523-60のアンテシェルフの中に入れました。


T20220910-1とT20220910-2は化粧行為をしないまま寄主に入れましたので、それを改善するため、接触の機会がより多くなるように、T20220910-3とT20220910-4とT20220910-5では、クリアカップよりも狭いフィルムケースの中にトゲアリの女王アリとクロオオアリの働きアリを1匹ずつ入れました。しかし、このようにしても化粧行為は起こりませんでした。

今回も、化粧行為がないままBH210523-60のコロニーの中に入れました。



4匹のトゲアリの女王アリ共に、しばらく経ってもクロオオアリの女王アリに咬みつくことができず、働きアリから拘束されることが多くなりましたので、殺されるリスクを考え、4匹とも救出しました。そして、クロオオアリの女王アリをコロニーから取り出してクリアカップに入れ、クロオオアリの働きアリがいない状態でトゲアリの女王アリを順次中に入れました。その後クリアケースの中に移し入れました。



翌日の9月24日、クリアケースの中にクロオオアリの働きアリを10匹入れました。トゲアリの動きが活発にはなりましたが、一方的に攻撃を受けていましたので、働きアリの数を3匹に減らしました。ただ、トゲアリとクロオオアリの働きアリが栄養交換をする場面もありました。









この日(9月24日)、トゲアリの女王アリが2匹死にました。


次の日の9月25日には、夕刻、トゲアリの女王アリが更に1匹死に、残るは1匹のみとなりました。



その後、10月2日、生き残っていた最後の1匹も死んでしまいました。







トゲアリの多雌の試みは実現できませんでした。その要因として考えられるのは、寄生を開始した時期にあるのかも知れません。
このトゲアリの女王アリは9月10日に採集しています。恐らくこの日の朝に結婚飛行に出かけたと考えられます。多雌を試み始めたのは9月23日の午前中からですから、その間13日経過しています。トゲアリの女王アリは4匹もいたのですから、そして、相当な時間クロオオアリの働きアリが3匹だったのですから、クロオオアリの女王アリの頸に咬みつき、そのまま放さないでいる機会は十分にあったはずです。しかし、それが見られませんでした。「本能が薄れた」とでも言えばいいのでしょうか。その根底を成す体力の余力不足が起因しているのかも知れません。(参照:「「トゲアリの女王アリは単独でいつまで生きられるか?」の結果」)
今年試みた一時的社会寄生で、最後に寄生が成功したのは、9月19日に寄生を開始した例です。この場合は、結婚飛行から9日後となります。
明言は出来ないものの、寄生をより確実に成功させるためには、採集後できるだけ早く寄生を開始するのが良いように思います。
参照:トゲアリの多雌コロニーに関する関連ブログ
「2匹のトゲアリが寄生」(2015年10月17日)
「トゲアリの女王アリの共存 その後」(2016年5月11日)
トゲアリの多雌寄生をせいこうしましたトゲアリ女王の数は今8匹です。最初入れたときは15匹でした
トゲアリの寄生から3年経ってるけど争う様子がなく平和に過ごしています
素晴らしい知見ですね。寄主はクロオオアリだったのでしょうか。また、その寄主は創巣から何年目のコロニーだったのでしょうか。今のトゲアリのコロニーの規模はどうなのでしょうか。
お時間の許す時にでも詳しく教えていただければ幸いです。
はい!寄生チャレンジしたのは初期コロニーのクロオオアリさいしょは一匹で成功させるのを待ってその後14匹入れましたがやっぱ女王が争い8匹までへってしましたのですが闘いが終わり最後はワーカーが争いそうになりましたが争いませんでした。いまトゲアリ女王同士が会っても大丈夫でした
これ重要だと思います
クロオオアリのワーカーの数は20ぴきぜんごがいちばんいいとおもいます。さいしょはクロオオアリがトゲアリの繭を食べてしまい失敗だと思ったのですがその次の日もう一個の繭が浮かしてきたと同時にクロオオアリは繭と食べることがなくなりました。
女王はまず動きを鈍くさせることですね。
そうするとトゲアリも仕留めやすいので成功率が上がるのです