9月19日にトゲアリの女王アリを41匹採集し、その内何匹かは事前にお声かけいただいていた方にお分けしましたが、それでも手元にまとまった数の女王アリが残りました。そこで、クロオオアリの1コロニーにだけトゲアリの女王アリを寄生させることにしました。
これまでの経験から、宿主側のコロニーの規模がある程度大きい方が良いように感じていましたので、2015年の5月15日に新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーS/N:B15002を用いることにしました。
9月22日の13時半頃、B15002から働きアリを1匹取り出し、クリアカップの中でトゲアリの女王アリと一緒にしました。間もなく、トゲアリの女王アリがクロオオアリを捕らえ、化粧を始めました。
間もなくトゲアリがクロオオアリを捕らえ、化粧を始めた 13時39分撮影
13時51分から1分30秒間の動画
クロオオアリがトゲアリの女王アリの肢に咬みついていましたが、やがて放しました。その後、両方共に自身の体に化粧をしていました。クロオオアリの方は、腹部がいびつな形にへこんでいました。
14時3分から1分30秒間の動画
クロオオアリの方から攻撃する様子はなく、トゲアリにもてあそばれている感じでした。トゲアリは引き続き、化粧に余念がありませんでした。
トゲアリの女王アリと一緒にするクロオオアリの働きアリは、特に考えがあったわけではないのですが、この1匹だけにしました。
14時17分直前に、トゲアリの女王アリと一緒にしていたクロオオアリをフィルムケースに移し入れ、このフィルムケースを蓋をしていない状態で、B15002の本巣の上方のアクセス穴の上に被せました。間もなく、トゲアリの女王アリは、B15002の本巣の中へ入っていきました。
14時17分から1分30秒間の動画
左上方のアクセス穴から入っていきました。その直後に複数のクロオオアリの働きアリに捕まってしまいました。やがて放たれますが、人工巣リトルアンテシェルフの上段で再び捕らえられました。
14時25分から1分30秒間の動画
その7分から8分後も、リトルアンテシェルフの上段で捕らえられたままでしたが、化粧を盛んに行っていました。
14時50分から1分30秒間の動画
それから24分から25分後、トゲアリは、自身の肢に咬みついて離れない1匹のクロオオアリを使って化粧をしていました。他のクロオオアリからは、攻撃はされていませんでした。
14時55分から1分42秒間の動画
その3分から4分後、リトルアンテシェルフの最上段に留まっていたトゲアリは、それまで咬みついていたクロオオアリから自由になり、上から4段目(下から3段目)に移動しました。最早、トゲアリを攻撃する者はいません。トゲアリはクロオオアリの塊の中でさえ自由に行き来できるようになっていました。やがて最下段の段へと移動しました。
14時59分から10分30秒間の動画
14時59分からは、トゲアリの女王アリの動きが活発になりました。最下段から2段目に移り、更に3段目へと移動しました。動きに余裕が見られ、化粧ではなく、身繕いもしていました。クロオオアリとの間に争いはなく、クロオオアリの集団がトゲアリを受け入れたかに見えました。更に、下から4段目へと上がっていきました。クロオオアリの塊の中へも入り込みました。クロオオアリの女王アリを探しているように見えました。やがて5段目(上から2段目)に入っていきました。実は、この段にクロオオアリの女王アリがいるのです。この段では、トゲアリの女王アリは、複数のクロオオアリの働きアリに、制止されました。不審がられているようです。1分10秒ほどたった時、複数のクロオオアリの制止を振り切って、クロオオアリの女王アリがいる塊へと進み、女王アリ同士の戦いが始まりました。戦いはトゲアリに有利に進み、背乗りから腹抱えへと体勢が変わっていきました。両者まぎれて一つ下の上から3段目に移動し、長い時間このままで膠着状態になりました。
寄生は順調に進んでいるように見えます。ただ寄生の成否は、何日も後にならなければ分からないものです。今後の経緯を見ることにします。