ムネアカオオアリ」タグアーカイブ

アリは水場が好き?!

もうずっと以前から、特にムネアカオオアリは、人工的な飼育下では、水があるところに集まってくることは分かっていました。

ムネアカオオアリ 5月6日撮影

上の写真では、ペットボトルの蓋の水の中には入っていませんが、水が浅い場合は肢下が水に浸かるようにペットボトルの蓋の中に入っていることがよくあります。
アンテグラウンドⅠ型Ⅱ型では、ケースの中に水槽を入れていますが、この水槽の水辺にもクロオオアリとトゲアリが集まってきます。

トゲアリ アンテグラウンドⅡ型の中の水槽 5月6日撮影
クロオオアリ アンテグラウンドⅠ型の中の水槽 6月4日撮影

ちなみに、アンテグラウンドで飼育しているクロオオアリとトゲアリは、他に水を与えていないので、この水槽の水を飲んでいることになります。

結婚飛行の〈自宅庭と蒜山高原〉の相関

いよいよクロオオアリとムネアカオオアリの結婚飛行が始まる時期になりました。ただ今年は時期が遅い方にずれているようです。
この間、庭の複数のクロオオアリの巣の様子を見てきましたが、結婚飛行が行われる前の巣口が拡張されるなどの変化は見られませんでした。そこで、近くにある例年の観察場所にも出かけて、結婚飛行の前兆があるか確かめることにしました。出かけた行き先は塚山公園です。
以前、結婚飛行や巣口で羽アリを見つけた箇所では、巣穴さえも見つかりませんでした。その代わり、別の場所にある2箇所の巣で、巣口にいる羽アリを見つけることができました。

翅は確認できなかったが、頭部の大きさから有翅女王アリと思われる 15時43分撮影
雄アリ 16時12分撮影

巣口の大きさや羽アリの個体数から考えると、結婚飛行はまだ先のようです。
自宅に戻って、主要な2つの巣の巣口の様子も観察しました。こちらは依然として結婚飛行の前兆は見られませんでした。

A巣の様子 16時51分撮影
B巣の様子 16時51分撮影

ところで、過去3年間は岡山県北の蒜山高原でクロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリを採集してきましたが、その日を逃さないためには、蒜山高原で結婚飛行が行われる日を特定する必要がありました。もし、自宅の庭でのクロオオアリの様子と蒜山高原での結婚飛行の日との間に、何らかの相関があれば、蒜山高原での結婚飛行の日を予測することができます。そこで、自宅の庭のクロオオアリの様子と蒜山高原で結婚飛行が行われた日の過去3年間のデータをまとめてみます。(ちなみにクロオオアリとムネアカオオアリは同じ日に結婚飛行を行います)

2016年(庭での結婚飛行は5月27日、蒜山高原では6月10日以前に結婚飛行のピークあり)
自宅の庭
5月21日 「庭のクロオオアリの羽アリが出てきた
5月27日 「庭のクロオオアリがついに飛翔
蒜山高原
6月11日 「3度目の採集旅行

2017年(庭での結婚飛行は5月18日、蒜山高原では5月21日以前の直近)
自宅の庭
5月11日 「いよいよ結婚飛行の季節
5月18日 「ついに結婚飛行
蒜山高原
5月21日 「蒜山高原へ」 21日以前の直近

2018年(庭での結婚飛行と蒜山高原での結婚飛行の日はほぼ一致の5月15日・16日)
自宅の庭
5月8日 「女王アリが出てきた
5月16日 「結婚飛行を襲うカラス」 5月15日にも結婚飛行があった可能性がある
蒜山高原
5月15日 「2018 蒜山高原

ところで、結婚飛行はある日一斉に行われると聞くことがありますが、少なくともクロオオアリやムネアカオオアリについては間違いです。結婚飛行はコロニー毎でも、複数の日に分散して行われます。昨年観察した例では、22日も日を空けて結婚飛行が行われました(「同じコロニーの2度目?の結婚飛行」)。ですが、飛び立つ個体数が最も多くなるピークの日があり、上記データはそれにほぼ当たる日であると思います。
上記のデータから言えることは、2016年についてはあいまいなデータになるので省いて考えるとして、自宅の庭でクロオオアリの羽アリを見てから(結婚飛行ではなく)、1週間から10日後に蒜山高原で結婚飛行があるということです。その3日間ほどの違いは、天候に左右されていたのかも知れません。
以上が、今年、蒜山高原へ採集旅行に出かける指標になればと思います。

2019年 クロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリの予約販売受付開始

2019年の5月から6月にかけて採集する予定のクロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリの予約受付を開始致しました。

今年もクロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリの採集を行います。多数採集できますと、研究に必要な数以上になった女王アリを提供致します。有償とはなりますが、ご希望の方はお申し込み下さい。
5月20日までにご予約をいただきますと、新女王アリに30日間の保証(届いた時点、あるいは届いた日を入れて30日以内に女王アリが死んだ場合は、送料無料で女王アリを再送)をお付け致します。それ以後は15日間の保証となります。また、新女王アリを研究用等でまとまった数お求めの場合は、別途割引料金を適用致します。詳しくは、こちらhttp://www.kajitsuken.net/新女王アリ.html)をご覧下さい。

2018 蒜山高原

2015年10月に現住所に引越してからも、それまでと同様に、オオアリの女王アリを採集するために長野県へも出かけていました。更に、2016年からは、岡山県の県北の蒜山高原へも出かけています。蒜山高原では、2016年の6月11日にクロオオアリの女王アリを13匹、ムネアカオオアリの女王アリを1匹、2017年の5月20日と21日にクロオオアリの女王アリを45匹、ムネアカオオアリの女王アリを10匹採集しています。
今年については、できれば遠方の長野県へは行かずに、蒜山高原だけにしておきたいと思っていました。採集する女王アリの数については、これまでの200〜300匹ではなく、50匹程度でよいとも考えていました。
岡山県の県北を含む5月12日の天気予報では、13日には雨が降り最高気温は17〜18℃程度ですが、14日には最高気温が一挙に10℃近く上がり、更に15日には最高気温が30℃近くまで上がるとのことでした。このことから、オオアリの結婚飛行は14日か、遅くても15日には行われると予想できました。そこで、14日の昼前に自宅を出、蒜山高原へと向かいました。

昨年まとまった数の採集ができた場所(ヒルゼン高原センター付近)へ行ってみると、昨年とは環境が様変わりしていました。

街路樹が切られていた

道路側の街路樹が全て切られていました。ただ花木は残されていました。
巣口の様子を見ると、羽アリの姿がありました。

多くはなかったが羽アリの姿もあった 14時0分撮影

ただ、結婚飛行を始めるには、時間的に少し早過ぎるようです。そこで、夕刻まで別の場所で待つことにしました。午後5時少し前になって、再びこの場所へ行きましたが、まだ結婚飛行は始まっていないようでした。
近くの花木の花を見ると、クロオオアリが来ていました。花の蜜を吸いに来ているのでしょうか。

花の蜜を吸いに来ているのだろうか 17時2分撮影

腹部が膨れているクロオオアリがいました。

腹部が膨れている 17時4分撮影

やはり蜜を吸っていたようです。この花木の花にも蜜があることが分かります。クロオオアリの貴重な蜜源になっているのかも知れません。
結婚飛行の方は、その後も行われませんでした。観察の限りでは、17時18分に雄アリが1匹飛び立っただけでした。

雄アリが1匹飛び立つのが見られた巣口 17時18分撮影

2日目の5月15日、昨日はヒルゼン高原センター付近でしか観察していませんでしたが、昼過ぎになって、別の場所にも行って見ました。

休憩所

そこは、以前ムネアカオオアリの働きアリを見かけた場所でした。案の定、今年もムネアカオオアリの働きアリが歩いていました。そうこうしている内に、ふとクロオオアリの女王アリの羽アリが駐車場を歩いているのを見つけました。

クロオオアリの羽のある女王アリ 13時12分撮影

更に、公園内でムネアカオオアリの女王アリも見つけました。

ムネアカオオアリの女王アリ 13時21分撮影

それからは、次々とオオアリの女王アリを採集することができました。午後4時にいったんこの場所での採集を止め、ヒルゼン高原センター付近へ行きました。
ここでは、もう結婚飛行は終わっていたのか、巣口に羽アリの姿はありませんでした。ですが、結婚飛行を終えて歩いているクロオオアリの女王アリを11匹採集しました。ただ、昨年とは大きな違いがあり、ムネアカオオアリの女王アリは1匹もいませんでした。また、採集できた数が少なかったという違いもあります。
ヒルゼン高原センター付近での採集を30分間ほどで終え、再び休憩所へ戻りました。午後5時頃になって、腹部を失ったムネアカオオアリの羽アリを見つけました。

腹部のないムネアカオオアリの女王アリ 17時5分撮影

この腹部を失ったムネアカオオアリの有翅女王アリについては、昨年ヒルゼン高原センター付近で多数見つけています。この事変はよくあることなのでしょうか。

今回の採集旅行では、クロオオアリの女王アリは96匹(休憩所85匹、ヒルゼン高原センター付近11匹)、ムネアカオオアリの女王アリは11匹(休憩所のみ)採集できました。クロオオアリの方は十分な数が採集できたことになります。ムネアカオオアリの方はもっと採集したいところですが、今年の採集旅行は、この1回だけで終えることにしました。

ムネアカオオアリに受け入れられなかったクロオオアリ

今年3月28日のブログ「ムネアカオオアリの同種間共存」で触れた共存コロニーのその後ですが、4月2日に、ムネアカオオアリの働きアリ5匹の中へ、S/N:RK170530-017のムネアカオオアリの働きアリ4匹を加えました。この時も 喧嘩なく、受け入れられました。また、4月22日には、ムネアカオオアリの働きアリ8匹の中へ、S/N:R15073のムネアカオオアリの働きアリ11匹を加えました。
そして本日5月1日に、S/N:R11055+070のムネアカオオアリの働きアリ3匹とクロオオアリの働きアリ1匹を加えました。注目すべきは、このクロオオアリの働きアリ1匹です。そもそもこのR11055+070は、2016年の11月1日にムネアカオオアリの女王アリが死んでからもクロオオアリと共存していたコロニーです。(詳しくは「異種間で共生するクロオオアリとムネアカオオアリ」を参照)果たして、ムネアカオオアリだけでできあがっている共存コロニーの中へ、これまでムネアカオオアリと共存していたとは言え、クロオオアリが入っていけるものなのでしょうか。

ムネアカオオアリは辛うじて受け入れられたようだ 5月1日撮影

クロオオアリは殺されてしまった 5月1日撮影

結果は、ムネアカオオアリの働きアリは受け入れられましたが、クロオオアリの働きアリは受け入れられませんでした。

クロオオアリに受け入れられたムネアカオオアリ

今年3月28日のブログ「クロオオアリの同種間共存(1)」で触れた共存コロニーのその後ですが、4月5日に、S/N: B15053+Rからクロオオアリの働きアリを7匹(+Rとありますが、既にムネアカオオアリはいません)を加えました。この時も 喧嘩なく、受け入れられました。また、4月14日には、S/N:BH17022のクロオオアリの働きアリ7匹と幼虫3匹を加えました。
そして本日5月1日に、S/N:B130605+R(旧名B131015)のクロオオアリの働きアリ6匹とムネアカオオアリの働きアリ1匹を加えました。注目すべきは、このムネアカオオアリの働きアリ1匹です。そもそもこのB130605+Rは、昨年の3月14日にクロオオアリの女王アリが死んでからもムネアカオオアリと共存していたコロニーです。(詳しくは「異種間で共生するクロオオアリとムネアカオオアリ」を参照)果たして、クロオオアリだけでできあがっている共存コロニーの中へ、これまでクロオオアリと共存していたとは言え、ムネアカオオアリが入っていけるものなのでしょうか。

クロオオアリの共存コロニーに受け入れられたムネアカオオアリ 5月1日撮影

結果は、ムネアカオオアリの働きアリ1匹も、クロオオアリの働きアリ6匹と同様に、このコロニーに受け入れられました。

 

ムネアカオオアリの同種間共存

クロオオアリの同種間共存の追試と同時に、ムネアカオオアリの同種間共存の追試も行いました。

R15100はムネアカオオアリのコロニーで、2015年5月27日に長野県で採集した女王アリのコロニーです。この女王アリは、右側の後翅が付いたままになっていましたが、子育ては順調で、2016年6月22日時点では、働きアリが38匹になっていました。
さて、この女王アリは、今年の3月19日に働きアリ8匹を残して死んでいました。そこで、このコロニーの中に、RH170520-05のムネアカオオアリの単独女王アリを入れました。この女王アリは、昨年の5月20日にヒルゼン高原センター周辺で採集した女王アリで、卵や幼虫や繭を持つことはありましたが、一度も成虫まで育てることができなかった女王アリです。

女王アリは巣の中心の部屋(下階)に入っていた 3月20日撮影

別の部屋(上階)にも働きアリがいた 3月20日撮影

上の2つの写真は、翌日の20日の様子です。働きアリは2つの部屋に分かれていますが、女王アリとの間に争いは見られませんでした。22日には、下階の部屋に働きアリが3匹と女王アリ、上階の部屋に働きアリが4匹いて、働きアリが下階の部屋で1匹死んでいました。28日現在、更に働きアリが1匹死んでいて、生きている働きアリは全部で6匹になりましたが、女王アリと働きアリの間に争いは見られません。断定はできませんが、死んだ2匹の働きアリは、女王アリに殺されたのではないと考えています。

以上から、現時点で言えることは次のようになります。

既に女王アリを失っているムネアカオオアリのコロニーの働きアリと、異年代(2年若い)のムネアカオオアリの単独女王アリは、単独女王アリから見て創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。

異種間で共生するクロオオアリとムネアカオオアリ

B130605+R(旧S/N:B131015)の場合
現在のこのコロニーの元々のコロニーは、2013年の6月5日に採集したクロオオアリの女王アリのコロニーでした。この女王アリは、繭からの羽化を介助する能力がなく、記録によると少なくとも翌年の6月29日までは働きアリはいませんでした。その後、記録が途切れますが、2016年5月14日にはクロオオアリの働きアリが3匹、ムネアカオオアリの働きアリが4匹になります。働きアリがいるのは、これも記録はないので成虫や幼生虫がどの程度外部から導入されたのか分かりませんが、外部から導入されたことは確かです。同年の8月26日には、クロオオアリが19匹、ムネアカオオアリが2匹になっています。その後、同年の12月1日には、クロオオアリ15匹、ムネアカオオアリ1匹の中へ、ムネアカオオアリ(S/N:R15066)の幼虫4匹を加えています。翌年の2017年3月14日には、女王アリが死んでいて、働きアリは前年と同数でした。それからほぼ1年が経ち、2018年の3月8日、クロオオアリの働きアリ11匹とムネアカオオアリの働きアリ1匹が共存しています。

右の赤みを帯びているのがムネアカオオアリ

ムネアカオオアリとクロオオアリが栄養交換を行っている

R11055+070の場合
このコロニーは、2011年7月27日に採集した2匹のムネアカオオアリの女王アリのコロニーを、2015年11月29日に合併したものです。
S/N:SIMSMA01055(働きアリ4匹 幼生虫無 黒みの強い女王アリ)
S/N:SIMSMA01070(働きアリ8匹 幼生虫無 女王アリ無し)
2016年6月22日には、ムネアカオオアリの合併巣の生まれたばかりのムネアカオオアリの働きアリを1匹と、ムネアカオオアリのコロニー(S/N:R120614)の繭を1個加えました。その1週間後の29日、ムネアカオオアリのコロニー(S/N:R120614-05)の繭3個幼虫17匹卵9個を入れ、翌日には同じコロニーの幼生虫を多数入れています。同年7月5日には、クロオオアリの働きアリが1匹(記録にはありませんが、クロオオアリの幼生虫を加えていたと考えられます)とムネアカオオアリの働きアリが2匹になりました。同年8月25日には、ムネアカオオアリが4匹いて、S/N:R15071のコロニーよりムネアカオオアリの働きアリ12匹と幼虫29匹を加えています。また、同日、S/N:B15044+Rのムネアカオオアリの働きアリ1匹(攻撃され1時間後馴染む)とクロオオアリの働きアリ3匹(翌朝までに死亡)、繭4個、幼虫6個を加えました。翌朝、ムネアカオオアリの働きアリが2匹、瀕死の状態でした。同年の11月1日にはムネアカオオアリの女王アリが死んでいて、ムネアカオオアリが8匹、クロオオアリが2匹、幼虫が10匹前後になります。そして、同月30日には、ムネアカオオアリが4匹、クロオオアリが2匹になり、その翌年の2017年3月14日には、ムネアカオオアリが7匹、クロオオアリが2匹になります。それからほぼ1年後の2018年3月8日現在、ムネアカオオアリの働きアリ3匹とクロオオアリの働きアリ1匹が共存しています。

今ではたった4匹だが、種が異なっても仲良く暮らしている

共生に関するブログ一覧

クロオオアリとムネアカオオアリの同種間の共生
コロニー同士の合併 共存 その1  2015年11月13日
コロニー同士の合併 共存 その2  2015年11月13日
クロオオアリの合同コロニーに同種の女王アリを入れて 結果  2016年05月10日
クロオオアリの複数の女王アリは同居できるか 結果  2016年05月10日
ムネアカオオアリの女王アリの同居  2016年05月10日
ムネアカオオアリの合併コロニーの半年後  2016年05月10日

クロオオアリとムネアカオオアリの異種間の共生
異種のアリ同士は仲良くできるか  2013年04月16日
単独女王アリと異種間の養子縁組?  2014年06月29日
2種のオオアリが混在するコロニー  2014年07月03日
2種のオオアリの家族  2014年09月01日
ここにも異種合同の家族が  2015年07月13日
現有のクロ・ムネアカ共存コロニー  2016年05月14日
ムネアカオオアリはクロオオアリの卵を受け入れるか?  2016年06月16日

トゲアリの共生
トゲアリの家族は他家の子どもを受け入れるか  2014年09月02日
トゲアリのコロニーの遺族同士の合併・共存は可能か  2016年05月11日
トゲアリの女王アリの共存 その後  2016年05月11日
トゲアリの2つのコロニーを合併  2016年06月22日

ミニアンテシェルフ(飼育器)を開発

アンテシェルフシリーズの小型人工巣を作りました。クロオオアリやムネアカオオアリ、トゲアリなどの大型のアリ用です。
巣内の床の総面積は、アンテシェルフが801平方センチメートル(約28.3cm平方の広さ)、リトルアンテシェルフが400.05平方センチメートル(約20cm平方の広さ)に対して、ミニアンテシェルフは174.15平方センチメートル(約13.2cm平方の広さ)です。
棚は3段あり、最上階は活動室と居室を兼ねます。

ミニアンテシェルフ

このミニアンテシェルフの特色の一つは、給餌器として大気圧式を採用していることです。蜜器と水器として使います。両者は同一仕様のものです。
当研究会製作の他の人工巣と繋げる端子はありませんので、拡張性はないのですが、創巣期から2〜3年は飼育できそうです。
詳しくは、こちらをご覧下さい。

種々のアリの幼虫の冬越し

クロオオアリとムネアカオオアリは、幼虫と共に冬越しをします。このことは人工巣での観察で以前からわかっていたことですが、他の種も含めて冬越しの様子を記録しておきます。

2011年採集のクロオオアリ S/N:B110608-04

同上

上の2つの写真に写っているのは、2011年の6月に長野県で採集した新女王アリのコロニーです。かなりの大家族になっていて、人工巣アンテシェルフ2個を連結して飼育しています。幼生虫は幼虫のみで、しかもかなり小さいことが分かります。

2015年11月4日に、自宅の庭の小型の電柱についていた配電盤の中から採集した仮称「ミシマアリ」(S/N:F151104)は、その後コロニーが大きくなっています。

左上方に女王アリが写っている 胸部に翅の付け根の跡があるので女王アリだと分かる

幼虫が見られる

この「ミシマアリ」の場合も、幼生虫の内、幼虫のみが越冬していることが分かります。

下の写真は、2015年5月2日に、ブドウの枯れた幹の中にいたところを採集したシリアゲアリのコロニー(S/N:S150502)です。

写真には幼虫が3匹写っている

大家族になった時期もありましたが、飼育器に小さなすき間ができた時に、出ていって戻らなかったアリもいて、今年の冬はさほど大きなコロニーではありません。越冬している幼生虫は少なく、幼虫のみです。

既に分かっているムネアカオオアリも含めれば、これら4種のアリでは、越冬する幼生虫は幼虫のみのようです。

蒜山高原へ

今回の採集の舞台となるヒルゼン高原センター付近

5月19日(金)の天気予報では、20日と21日は気温が上がり、蒜山(岡山県北)でも30℃近くになるとのことでした。ここまで気温が上がると、オオアリの羽アリが結婚飛行を行う可能性がとても高くなると思われます。そこで、急遽、蒜山高原へ採集旅行に出かけることにしました。
20日の午前中に自宅を出、11時過ぎに現地に着きました。昨年、ムネアカオオアリが1匹採集できたヒルゼン高原センター近くの場所で、オオアリの女王アリを探していると、運良く1匹見つけました。クロオオアリの女王アリです。同じ種のクロオオアリの働きアリから攻撃を受けていました。

クロオオアリの働きアリに右触角を咬まれている 11時41分撮影

既にこの場所ではクロオオアリの結婚飛行が始まっていたことが分かります。午前中の発見ですから、この女王アリは昨日結婚飛行をしたのでしょう。
辺りを詳しく探しましたが、女王アリはこのクロオオアリの女王アリ1匹だけでした。
その後、夕刻まで、昨年オオアリの女王アリが採集できた蒜山高原内の他の箇所を回ってみましたが、1匹も採集できませんでした。
夕刻になって、再びヒルゼン高原センター付近に行ってみると、羽アリが巣口から出ていました。巣が密集しているところでは、およそ10mの範囲に複数の巣口がありました。

複数の巣口の一つ 16時39分撮影

複数の巣口の一つ 16時48分撮影

複数の巣口の一つ 樹の根元から出ていた 16時54分撮影

5時半頃になると、よりたくさんの羽アリが出てくるようになりました。

直前の写真と同じ場所 羽アリの数が増えてきている 17時23分撮影

幹を上っていく女王アリ 17時23分撮影

ところで、その間に奇妙なことに出会いました。その一帯を歩いて女王アリを探していたのですが、翅の付いたムネアカオオアリの女王アリが地面を歩いていました。

腹部が無くなっている 17時4分撮影

よく見ると、腹部が全くないのです。それでも元気に歩いていました。どうしてこのようなことになったのでしょう。この1匹だけかと思っていましたが、次々と同じことに出会うのです。

3匹採集した時点で撮影 17時15分撮影

結局この日、同様に腹部を失って地面を歩いていたムネアカオオアリを22匹も見つけました。見つけた場所は、このブログ冒頭の写真に写っている歩道兼自転車道と、下写真の道路を隔てた広々とした駐車場です。

駐車場 写真右奥には使われなくなった更に広い駐車場がある

広範囲に亙って見つかったこと、また駐車場も含めムネアカオオアリの巣がない場所で見つかったこと、翅を落とした腹部のない女王アリは見つからなかったことから、巣口で何者かに狙われたのではなく、飛行中に襲われたと考えられるでしょう。それにしても、他に体に怪我もなく、見事なほどに腹部のみがないのです。

翌日21日は、早朝から採集を始めました。気温は12°前後でした。

5時38分の気候

ヒルゼン高原センター周辺を大きく一回りしました。そうすることで分かったことは、前日にオオアリを採集した付近が最もクロオオアリの巣の密度が高いということと、近くに雑草や樹のない芝生のみの箇所では、クロオオアリの働きアリはほとんど見られないということです。逆に、下の写真のような環境(雑草や樹がある)にはクロオオアリが棲息していました

こうした環境(雑草や樹がある)のところにはクロオオアリがいた

さて、2日間を通してクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリを合せて55匹採集しました。採集した箇所のほとんどは冒頭の写真の箇所で、写真に写っていない反対側の歩道と自転車道を含みます。歩道と自転車道の横には雑草が生えていますが、そこでは採集していません。そこにも、翅を落とした女王アリがいるとは思いますが、雑草に隠れて姿が見えないのでしょう。
不思議に思うのは、道路を隔てた広々とした駐車場には、1匹も翅を落とした女王アリがいなかったことです。歩いていれば、とても簡単に見つけられますから、本当にそこにはいなかったと言えます。結婚飛行で、空中高く飛び上がれば、交尾後どこにでも地面に落ちてくるように思うのですが、そうなってはいなかったのです。これは、今回の偶然なのでしょうか。
また、比較的数多く女王アリが採集できた箇所は、既述のおよそ10m程の範囲ですが、空中高く飛び上がったとすれば、この場所に降り立つことはないでしょう。考えられることとしては、他巣が近くにあるため、空中高く飛び上がることなく交尾をしたのではないかということです。
長野県でクロオオアリの巣が密集している場所で採集した際も、クロオオアリの巣の極く近くで翅を落とした女王アリを多数採集しました。どうしてこのようになるのか、とても興味深いことです。

「移植」組が地上に出てきた

昨年の4月に数回に渡って、合わせてクロオオアリで9家族、ムネアカオオアリで13家族のコロニーを庭に「移植」しました。(詳しくは「蟻を庭に放つ その1」「蟻を庭に放つ その2」「蟻を庭に放つ その3」「蟻を庭に放つ その4」参照)この内、昨年の秋に生き残っているのが確認できたのは、わずかにクロオオアリの2つのコロニーだけでした。この2つのコロニーは、「蟻を庭に放つ その1」に出てくるクロオオアリの家族です。
現在の自宅では、庭は自然に恵まれている環境なので、多くのオオアリのコロニーが生き延びられるだろうと考えていましたが、振り返ってみると、春先にカラスノエンドウがたくさん生えていたものの、夏から秋にかけては庭には蜜源はなくなっていました。昨年4月の「移植」も、以前に住んでいた旧宅での「移植」(「2011/07/27 庭で飼うために」他参照)も、蜜が恒常的には確保できなかったことが、オオアリが死滅した主な原因のように思えます。
さて、この生き残っていた2つの家族のクロオオアリが、そろそろ地上に出てくるのではないかと、幾日か前から観察していましたが、今日の午後1時過ぎにそれらしき形跡を見つけました。巣から運び出されたような砂粒があったのです。

巣から運び出されたような砂粒が見える

クロオオアリの姿は見えませんでしたが、これらの砂粒はきっとクロオオアリが巣から運び出したのでしょう。この場所は、シリアル番号SIMSMA01057(2013年6月15日採集)のクロオオアリの家族を「移植」した場所です。
4時半頃見ると、巣から砂粒を運び出す働きアリの姿がありました。昨年の秋に生存が確認できていた2家族の内の1家族は、無事に冬を越したようです。

巣の中から砂粒を運び出すクロオオアリの働きアリ

アリの巣の同居人

オオアリの巣にはとても小さな生き物が同居しています。この生き物は、アリが食べ残している昆虫があると多く見かけますので、昆虫の死骸を食べているようです。乾燥した箇所にもいて、腐ったものを食べているようではありません。
自然発生するかのように現れるため、この生き物の発生を防ぐ術はまだ見つかっていません。

ND4_3577

左に写っているのがアリの巣の同居人

アリが砕いた昆虫の残滓を食べているところ

アリが砕いた昆虫の残滓を食べているところ

この生き物は、ダニの仲間ではなく昆虫のようです。体は頭部・胸部・腹部から成り、肢は6本あります。また、この昆虫には翅がありません。この昆虫は、体の大きさは様々ですが、どれも同じ姿をしているので、不完全変態をしていると言うよりも無変態のようです。
アリはこの昆虫に気づかないようです。また、この昆虫は、アリに危害を与えてはいないようです。
手元に『アリの巣の生きもの図鑑』『アリの巣のお客さん』という本がありますが、いずれにもこの昆虫は載っていなかったため、それ以上のことは分かりませんでした。
そこで、次のいずれかではないかと考えています。

その1:この昆虫は、アリの巣に寄生したり、共生したりする昆虫ではなく、言い換えれば、アリの巣の中で暮らすというわけではない。たまたま、アリの巣の中に昆虫の死骸があったので出現したに過ぎない。
その2:この昆虫は、アリの巣の中にいる固有の種で、昆虫の死骸を食べる昆虫である。アリの巣の中で暮らすことで、安全に暮らせ、かつ昆虫の死骸を提供される。アリにとっては、無害・無益な同居人で、片利共生となっている。

羽化の介助ができない女王アリ

シリアルナンバーR15016は、昨年採集したムネアカオオアリの女王アリで、7月4日の時点で、働きアリと繭が無く、幼虫2匹は死んだ状態で卵が12個ありました。子育てに失敗しているのですが、それでも女王アリは元気に生きています。
このコロニーに、同日、大繁栄しているムネアカオオアリのR120614-04から繭12個、幼虫7匹を加えました。
7月7日に見ると、働きアリはまだ生まれていませんでしたが、2個の繭が羽化しかけていました。いずれも、触角が繭から出て動いています。ですが、女王アリは何もしないでいました。通常なら、働きアリがいない時は、女王アリが羽化を介助するはずです。
そこで、この2つの繭を取り出して、B130605+R(クロオオアリの働きアリ3匹とムネアカオオアリの働きアリ5匹のクロオオアリのコロニー)とR15055(働きアリ3匹のムネアカオオアリのコロニー)のそれぞれを入れました。
すると、どちらのコロニーも羽化の介助を始めました。

B130605+R

B130605+R

女王アリも羽化の介助をしている R15055)

女王アリも羽化の介助をしている R15055)

ところが、しばらくしてB130605+Rの方を見ると、羽化したのですが、左中脚と後脚の途中から先がなくなっています。

左中脚と後脚の腿節の途中から先ががなくなっている

左中脚と後脚の腿節の途中から先ががなくなっている

R15055の方はと言うと、羽化したにも関わらず死んでしまったようです。

死んでいるようだ

死んでいるようだ

やがて、この羽化したばかりの大型の働きアリは、食べられていました。

頭部から食べられていました

頭部から食べられていました

今日7月8日の朝、B130605+Rの方で羽化した働きアリはいなくなっていました。死骸もないようで、完全に食べられたようです。ちなみにR15055の方の働きアリの死骸は残っていました。

R15016は、羽化の介助が出きないことがわかりました。それでも、過去のデータを見ると、昨年の7月に働きアリが1匹だけ羽化しています。ですが、この1匹は、極く短い期間に女王アリに食べられています。羽化に何らかの問題があったためにその働きアリが殺されたのか、それとも他の要因なのかは分かりません。

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羽化の介助ができなかった繭を取り去った後のR15016

関連ブログ:
異常な個体差」(2013年9月24日)

自分の巣に戻れない室内のアリ

アリを飼育している部屋で、時々はオオアリが這っているのを見かけます。世話をしている時に気づかない内に逃げ出しているようなのですが、今日7月7日は、まとまった数のムネアカオオアリが部屋の中を歩いていました。後で数えてみると少なくても9匹だったのですが、歩いている箇所から考えて、同じ巣から出てきたようです。いったいどこの巣から出てきたのでしょうか。
人工巣をよくよく注意深く見ても、シリコン栓などが外れたりしているわけでもなく、巣を特定することができません。たまたま1匹がある人工巣のアンテシェルフの側面を歩いていましたので、その巣の中に入れましたが、この巣ではなかったらしく、攻撃を受けてしまいました。
そこで、逃げ出した巣を特定するために、ペットボトルの蓋に蜜を入れて、歩いているアリの近くに置いてみました。しばらくすると、その蜜を見つけ、吸い始めました。

3匹も集まりました

3匹も集まりました

3匹も集まりましたが、初めに蜜を見つけたアリが呼んできたわけではなく、他の2匹も歩いていて偶然に見つけました。
そうこうしている内に、別のところで、1匹のムネアカオオアリが、死んだ仲間を銜えて歩き始めました。自分の巣に戻るつもりでしょうか。後を追えば、巣が特定できるはずです。

死んだ仲間を銜えて歩くムネアカオオアリ

死んだ仲間を銜えて歩くムネアカオオアリ

ところが、人工巣を置いていない収納棚の前まで来ると、死体を置いて立ち去りました。このムネアカオオアリの巣は特定できませんでした。

死体を置いて立ち去るムネアカオオアリ

死体を置いて立ち去るムネアカオオアリ

蜜に集まったムネアカオオアリですが、その内に腹部がいっぱいになり、歩き始めました。ところが、慌てているわけではないのですが、右往左往しているようで、行き先が定まらないのです。自然界では、帰路は、往路とは少し違っていても、また途中迷うことがあっても、巣のある方向へと進みます。下の写真は、かなり時間が経った頃撮影したものですが、蜜の近くで、蜜を吸った者同士で栄養交換をしています。本来なら、巣に戻って栄養交換をするところです。結局、自分の巣へは戻っていないのです。

2ヶ所で栄養交換を行っている

2ヶ所で栄養交換を行っている

なぜ、部屋の中では自分の巣に戻れないのでしょうか。このことは、今回の観察が初めてではなく、これまでも気づいてはいましたが、今回更にはっきりしてきました。
よく言われていることは、アリは腹部から道しるべになる液を出して歩き、そのしるべを頼りに巣に戻ると言われていますが、こうした室内での行動を見ると、そうではないように思えます。
アリの道について、探求する価値がありそうです。

関連ブログ:
マーキングを撮る」(2013年6月12日)
アリの道」(2016年4月14日)

自分の巣の働きアリに殺される雄アリ

今年の6月16日のブログ「人工巣でムネアカオオアリの雄アリが生まれていた」で、雄アリが働きアリから攻撃を受けている様子について触れていますが、6月24日にも別のコロニーで同じような光景を目にしました。

自分の巣の働きアリから攻撃を受ける雄アリ

自分の巣の働きアリから攻撃を受ける雄アリ 6月24日撮影

このコロニーは、昨年の2015年に新女王アリを採集した家族(S/N:R15071)で、雄アリが1匹生まれていました。

中央が雄アリ 6月22日撮影

中央が雄アリ 6月22日撮影

左の大きめの繭の殻が雄アリの繭だったようだ

左の大きめの繭の殻が雄アリの繭だったようだ

その雄アリが、24日には同じ巣の働きアリに攻撃されていたのです。この度も6月16日と同じように、翅を咬まれていました。ただ、今回は働きアリ1匹だけが攻撃をしていました。
このこととは関係がないと思いますが、その2日前の22日に女王アリが死にかけているのに気付いていました。
24日以降、雄アリのその後を観察していませんでしたが、本日7月3日に見てみると、雄アリは死んでいて、その死体が残っていました。ちなみに、女王アリも死んでいました。

雄アリが2度まで、巣内で働きアリから攻撃を受けているのを見たわけですが、このことは、自然界でも行われているのではないかと思われます。6月16日にせよ、24日にせよ、自然界では既に結婚飛行が済んでいる時期です。結婚飛行の時期を過ぎても、例外的にまだ巣に残っている雄アリがいることもあるでしょう。そんな時、雄アリは働きアリに攻撃され、殺されてしまうのでしょう。

2度目の大山

6月12日のブログ「3度目の採集旅行」で、6月10日の夕刻の大山でのオオアリの状況について触れていますが、6月20にも大山に行き、オオアリを見つけることができました。
大山寺町の大型の駐車場から大山寺をめざします。途中は、とても感じの良い石畳が続きます。

大山寺に向かう石畳の参道

大山寺に向かう石畳の参道

その石畳の上をクロオオアリが歩いていました。

石畳の上を歩くクロオオアリ

石畳の上を歩くクロオオアリ

6月10日には、この個所には来ていませんが、大山でクロオオアリの働きアリを始めて目にしました。更に、大山寺へと歩いていくと、ムネアカオオアリをあちこちで見つけることができました。

ムネアカオオアリ

ムネアカオオアリ

本堂近くまで行くとムネアカオオアリがずいぶんと多くなりました。本堂前の石畳にも多くのムネアカオオアリがいて、巣を見つけました。

本堂前の石畳

本堂前の石畳

石畳のすき間の巣穴に入る直前のムネアカオオアリ

石畳のすき間の巣穴に入る直前のムネアカオオアリ

このムネアカオオアリは樹木の中にではなく、石畳のすき間に巣を作っていました。

大山寺の後は、6月10日に訪れた豪円山の麓にも行きました。ここは、その日、翅が付いたクロオオアリの女王アリを1匹採集したところです。その時は、オオアリの働きアリは1匹もいなかったのですが、クロオオアリの働きアリをあちこちで見かけました。

クロオオアリの働きアリ

クロオオアリの働きアリ

今回の旅で、大山寺周辺(標高800m前後)にもクロオオアリとムネアカオオアリが棲息していることが分かりました。

人工巣でムネアカオオアリの雄アリが生まれていた

6月15日、ムネアカオオアリのコロニーで初めての光景を見ました。
このコロニーは、今から4年前の2012年6月14日に新女王アリを採集したコロニーで、現在は、かなり大きなコロニーになっています。その光景とは下の写真のようです。

雄アリが仰向けになっていて、両翅を引っ張られている

雄アリが仰向けになっていて、両翅を引っ張られている

雄アリがいて、その雄アリは仰向けになっています。もちろんこの雄アリは生きています。その仰向けになった雄アリの両方の翅は、働きアリに両方から強く引っ張られているのです。身動きが取れない状態です。
そもそも雄アリがいることが驚きでした。他にもいないか見ましたが、この1匹だけでした。なぜ、雄アリがこんなふうにされているのかなぞでした。
今日見ると、雄アリの姿がありません。食べられたかもしれない体の一部や翅などの残骸も見つけることができませんでした。また、新たに生まれたかもしれない雄アリもいませんでした。あの光景は、いったい何だったのでしょうか?

ムネアカオオアリはクロオオアリの卵を受け入れるか?

6月14日、今年採集したクロオオアリの新女王アリ(S/N:B16009)が卵を13個残して死にました。そこで、昨年新女王アリを採集したムネアカオオアリのコロニー(S/N:R15082)の中にこの13個の卵を入れることにしました。このムネアカオオアリのコロニーは、2年目を迎えていますが、働きアリが4匹、繭が2個、幼虫が5匹と多数の卵の小規模なコロニーです。
クロオオアリの卵でありながら、ムネアカオオアリのコロニーに入れようと考えたのは、ムネアカオオアリがクロオオアリの卵を受け入れるかどうかを調べようと思ったからです。その卵が成虫まで成長すれば、受け入れたかどうかは明らかに分かります。

昼前に13個の卵をムネアカオオアリのコロニーに入れました。するとまもなくその卵をムネアカオオアリの働きアリがかじり始め、薄い皮が破れて出てきた汁を吸い取っていました。皮だけになると何回も噛み、はっきりしなかったのですが、その皮まで食べたようです。そうしたことを2回は見ました。
12時半頃様子を見てみると、卵は10個残っていて、その内5個は、ムネアカオオアリの幼生虫がいる場所に運ばれていました(B16009のクロオオアリの卵は、R15082のムネアカオオアリの卵より、明らかに濃い黄色をしており、区別が容易につきました)。残りの5個は、ほぼ入れたままの場所にありました。3個は食べられたようです。
15時頃に見てみると、9個の卵が、ムネアカオオアリの幼生虫がいる場所に運ばれていました。その他の場所に卵はありませんでしたので、結局4個の卵が食べられたようです。

より黄色い卵がクロオオアリの卵

より黄色い卵がクロオオアリの卵 9個ある

次の日の15日に見てみると、濃い黄色のクロオオアリの卵は8個までは数えられました。16日に見てみると、はっきりしないのですが、9個あるようにも見えました。いずれにしろ、このコロニーのムネアカオオアリは、クロオオアリの卵の多くを受け入れたかに見えます。ただ、クロオオアリの成虫が生まれるまでは、結論は保留となります。

3度目の採集旅行

これまでに2度採集旅行に出かけていますが、まとまった数の新女王アリは採集できずじまいでした。移動距離が片道500kmあり、これまでに2000km車で走ったことになります。三度、同じ採集場所に行きたいところですが、そうすると走行距離が3000kmにもなり、直線距離にして沖縄県の那覇から北海道の稚内までの距離を更に500km超えてしまいます。これはさすがに遠すぎます。
もう既に6月に入っていますから、クロオオアリやムネアカオオアリの結婚飛行に出会うには、標高が高いところへ行かざるを得ません。比較的近場で標高が高いところということで、中国山地へ行くことにしました。

6月10日は全国的に良い天気になり、気温も上がる予報でしたから、10日と11日にかけて採集旅行に出かけました。初めに鳥取県にある大山へ向かいました。10日は朝早くから出かけたものの、事情があり、大山寺近辺についたのは、もう日が暮れかけた19時少し前でした。豪円山(ごうえんざん)の麓に車を止め(標高812m)、スキー場の芝生を歩いてみましたが、クロオオアリについては、働きアリさえ見つけることができませんでした。あきらめて車に乗ろうとした時、翅のついたクロオオアリの女王アリが1匹地面を歩いていました。クロオオアリの働きアリの姿こそありませんでしたが、近くにクロオオアリが棲息しているようです。ただ、この辺りは、クロオオアリは極めて少ないようです。大山寺近辺を他に3ヶ所探してみましたが、1匹もクロオオアリの働きアリを見つけることはできませんでした。
帰路、大山桝水高原スキー場(標高710m前後)にも立ち寄りましたが、ここにもクロオオアリの働きアリの姿はありませんでした。

翌11日は、岡山県北の蒜山高原で採集を行いました。

蒜山高原 ヒルゼン高原センター近く

蒜山高原 ヒルゼン高原センター近く

蒜山高原でおそらく最も人が集まるヒルゼン高原センターの駐車場脇を調べてみましたが、クロオオアリの姿はありませんでした。そこで、少し上方へと続く自動車道を走り、側道の駐車スペースに車を止めました(標高535m)。その脇には、幅の広い自転車道と歩道があり、花が咲いている草木がありました。舗装された道や道脇のスペースや、人工的な植栽や自然の花々、これらはクロオオアリが棲息し易い環境です。

花が咲く自転車道

花が咲く自転車道と歩道

案の定、クロオオアリの巣があちこちにありました。

クロオオアリの巣があちこちにあった

クロオオアリの巣があちこちにあった 5時33分撮影

この採集旅行で初めてのクロオオアリとの出会いでした。ただ、まだ時刻が早かったので(5時半頃)、巣穴を覗き込むだけでは結婚飛行を終えているかどうかは分かりません。しばらくの間は、新女王アリが地面を歩いていないか見て回りましたが、新女王アリの姿はありませんでした。昨日、結婚飛行が行われておれば、まだ地面を歩いている新女王アリがいると思われますが、いないということは、このあたりでは昨日は結婚飛行が行われなかったということになります。
そうすると、何日か前に結婚飛行のピークが終わってしまったとも考えられるわけで、不安でした。
そこで、巣穴が大きく開いている巣(結婚飛行が行われる頃は巣穴が大きくなり、その後は巣穴が小さくなるか、なくなることが分かっているため)を崩してみました。すると、雌雄の羽アリが出てきました。まだ、羽アリが巣の中にいたのです。

この場所には、また夕方に訪れることにして、ヒルゼン高原センター近辺2ヶ所を探索した後、車で県道422号線を東へと走りました。途中休憩所に車を止めて、クロオオアリを探すとすぐに見つけることができました。蒜山高原には、クロオオアリが多数棲息していることが分かってきました。
では、ムネアカオオアリはというと、この休憩所で初めて見つけました。

初めて見つけたムネアカオオアリ

初めて見つけたムネアカオオアリ

巣の在りかを探そうと思い、腹部が膨れているムネアカオオアリの後をつけてみました。すると、落ち葉などが積もっている場所で姿を消しました。

落ち葉などが積もっている場所 中央の縦に置いた枝の上端あたのすき間に入っていった

落ち葉などが積もっている場所 中央の縦に置いた枝の上端あたのすき間に入っていった

巣穴があるようには見えません。けれどもこれまでの経験から、ここに巣に通じる入り口があるようにも思えました。そこで、軽く掘り返したのですが、ムネアカオオアリは1匹も出てきませんでした。

次に車を止めたのは、百合原休憩園地(標高528m)です。しばらく探していると、掘り出した粒状の土がある穴を見つけました。

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8時20分撮影

上の写真には写っていませんが、この穴を掘っているクロオオアリの女王アリがいました。この採集旅行で初めて出会った女王アリです。今穴を掘っている最中であることから、この女王アリは昨日結婚飛行を行ったと考えられます。辺りを注意深く探しましたが、見つかった女王アリはこの1匹だけでした。

次に道の駅「蒜山高原」(標高510m)へ行きました。百合原休憩園地に近いこともあり、この辺りでも昨日結婚飛行が行われた可能性が高いと考え、まだ地面を歩いている女王アリを探して、駐車場周辺を歩きましたが、見つけられませんでした。車のある場所に戻った時、すぐ足下の地面に穴を見つけました。クロオオアリの新女王アリが掘った穴に似ています。草の細い茎を穴に突っ込んでいると、クロオオアリの女王アリらしきものが見え、やがて穴から出てきました。

クロオオアリの女王アリが掘っていた穴と、採集した女王アリ

クロオオアリの女王アリが掘っていた穴と、採集した女王アリ 9時25分撮影

その目で見てみると、次から次に穴を見つけることができました。少し深めの穴の場合、薬さじで穴の回りを少し広げて女王アリを穴から追い出しました。

採集に使った薬さじと、女王アリと穴

採集に使った薬さじと、女王アリと穴 9時45分撮影

穴から顔(頭部)が見える

穴から顔(頭部)が見える

穴の中にいた女王アリは、穴を掘っている途上でしたが、3ヶ所で穴の深さを測ってみました。すると、20mm、35mm、18mmでした。
この道の駅では、9時過ぎから10時40分頃の間に、8匹のクロオオアリの女王アリを採集しました。内、地上を歩いていたのが2匹でした。

地上を歩くクロオオアリの女王アリ

地上を歩くクロオオアリの女王アリ 道の駅「蒜山高原」 10時18分撮影

午後になり、もう一度、早朝訪れたヒルゼン高原センターの上方の場所に行きました。羽アリがいるかどうかを調べるために崩した巣を見てみると、復旧が進んでいて、羽アリが地上に出ていました。

雄アリが見える 14時7分撮影

雄アリが見える 14時7分撮影

翅のある女王アリも巣から出ていた 14時7分撮影

翅のある女王アリも巣から出ていた 14時7分撮影

その後もう一度、百合原休憩園地に立ち寄りました。車を降りてすぐに歩いているクロオオアリの女王アリを見つけました。この後3匹、やはり歩いているクロオオアリの女王アリを見つけました。

再び、道の駅「蒜山高原」に16時半頃までいましたが、新たに女王アリは見つけられませんでした。夕方になり、三度、早朝訪れたヒルゼン高原センターの上方の場所に行きました。羽アリがいるかどうかを調べるために崩した巣とは別の巣で、羽アリが巣から出ていました。下の写真は3ヶ所の様子ですが、極く近くなので、同じコロニーと思われます。

17時4分撮影

17時4分撮影

17時8分撮影

17時8分撮影

17時17分撮影

17時17分撮影

ところで、17時5分ごろ、この場所で、ムネアカオオアリの新女王アリが歩いているのを見つけました。この場所では、ムネアカオオアリの働きアリの姿はありませんでしたので、少し意外でした。ムネアカオオアリの女王アリに出会ったのは、この採集旅行を通じてこの1匹だけでした。

ムネアカオオアリについては、県道422号線沿いの複数の場所で、少数ですが働きアリを見ています。蒜山高原にもムネアカオオアリが棲息していることが分かります。
今回の採集旅行では、クロオオアリの女王アリは合わせて13匹採集できましたが、結婚飛行のピークについては、この蒜山高原ではもう既に終わっていたと思われます。それは、多くのクロオオアリの巣では、夕刻になっても巣口に羽アリが現れなかったからですし、巣口が広めの巣が少なかったからです。

こうして、3度目の採集旅行が終わりました。来年からは、蒜山高原も採集地に加えようと思います。