B16015は、6月19日に、自宅の庭にミツバチの巣箱を使って移植したクロオオアリのコロニーです。そのコロニーが、引越を始めていました。
気づいたのは6月29日のことで、早朝に庭を見回っていた時のことでした。
先ず目に付いたのは、繭を運んでいるところでした。芝地の斜面を上へと歩いていきます。少しして、そこより下の方を見ると、同じく繭を運んでいる複数のクロオオアリがいました。
これは、6月19日に移植したコロニーが引越をしているところだろうと思い、更に下の方にあるミツバチの巣箱を見ると、ちょうど仲間を咥えて歩いていくクロオオアリがいました。
やはり、B16015が引越を始めているようです。もう一度斜面の上の方を見ると、階段として踏み石にしているコンクリートブロックと芝生の間に繭を引きずり込んでいました。
後に続くクロオオアリを観察しても、同じ場所で繭を引き込んでいきます。この場所に巣を作ったようです。その場所は、コンクリートブロックの階段の上から2番目でした。
幼虫を運び出しているところも見ました。
初めに引越に気づいてから2時間ほど経っても、まだ繭を運び出しているところを見ました。
この引越はいつから始まっていたのか、また何時頃終わりそうなのかが全く分かりませんでした。ミツバチの巣箱の蓋を開けて、人工巣アンテネストを見ると、まだ引越前とほとんど様子が変わりませんでした。引越は始まってまだそれほど時間が経っていないように思えました。
引越の際、女王アリがどのようなタイミングで移動するのかを観察したかったのですが、これ以上時間を取って観察しても、しばらくの間は女王アリの引越に出会せないように思え、9時に観察を終了しました。
それから、1日置いて7月1日、ミツバチの巣箱を開けてみると、アンテネストの中のアリの部屋が空になっていました。
2匹ほどアンテネストの中で働きアリを見ましたが、女王アリも含め引越は既に完了しているようでした。
引越先の巣の場所は分かってはいましたが、巣口を特定するために、コンクリードブロックに接する芝を刈りました。すると、コンクリートブロックの1つの穴が一部むき出しになり、穴の中から働きアリが飛び出してきました。
コンクリートブロックの穴を巣として利用しているのかも知れません。だとすると、上下左右の4面はコンクリートに覆われ、安全が確保されていると思われます。
芝を刈ったために、不用心にも空いてしまった前面の穴を塞がなくてはならなくなりましたが、辺りには穴を塞ぐ材料が無いように思いましたので、真砂土で周囲を覆いました。
1時間ほど経つと、巣口は適度に塞がれていました。
今回の引越先は、意外にも移植した場所からかなり離れた場所でした。
直線距離にして7.8mです。人間にとっては極近くですが、クロオオアリにとっては、たいそうな距離です。上掲の6月29日の8時31分撮影の繭を咥えたクロオオアリの足跡を追ってみると、ミツバチの巣箱から新巣の巣口に到着するまで、17分強かかっていました。直線距離を使って計算するのは必ずしも妥当ではありませんが、分速にするとおよそ46cm/分になります。この数値は、繭を運んでいたとは言え、クロオオアリの通常の歩く早さからするとかなり遅い数字です。その原因として考えられるのは、主に芝生の上を移動したからでしょう。もっとも、巣口から下方にあるコンクリートブロック9箇所については、全て平面を横断していました。これはクロオオアリなりの知恵のようなものなのでしょう。
どのような過程で、こんなにも移動するには不便な場所を見つけ、移動先として選んだのか興味深いところです。
ところで女王アリは引越の過程のどの時点で移動したのでしょうか。今回は、というか今回もなのですが、ついに出会すことはできませんでした。私がひそかに思っていることは、女王アリが引っ越すのは夜間なのではないかということです。鳥に襲われるのが一番危険だと思うのです。