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今年のオオアリの結婚飛行の日

今年も異常気象なのでしょうか、私が住む中国地方では6月26日に梅雨入りしました。これは、記録が残る1951年以降で最も遅い梅雨入りだそうです。
そのためか、今年はクロオオアリやムネアカオオアリの結婚飛行の日を見誤ったようです。採集旅行には4回出かけましたが、結婚飛行のピークの日に出会うことなく、今年の採集を終えることになりました。
6月11日に自宅の庭で、本格的なクロオオアリの結婚飛行を観察してから、翌日の12日から14日まで長野県へオオアリの採集に出かけました。これまでに3回、岡山県の蒜山高原へ採集旅行に出かけたことについては、既にブログに書いた通りですが、4回目に当たる長野県では、1匹も新女王アリを採集することはできませんでした。既に、クロオオアリもムネアカオオアリも結婚飛行は終わっていたようです。どの巣穴を覗いて見ても、巣穴は小さく、羽アリの姿はありませんでした。

クロオオアリの巣 長野県駒ヶ根市内 6月13日撮影

これまでに分かっている今年の結婚飛行のピークの日は次のようになります。(市町村名も分かっていますが、ここでは県名のみ記載します)
5月23日 栃木県(ムネアカオオアリも)
5月25日 長野県(ムネアカオオアリも)
6月03日 香川県(クロオオアリのみ)
そして、自宅の岡山市では、6月11日(クロオオアリのみ)
これのみの情報からは、より北方でしかも高度が高いところの方が、結婚飛行が早かったことになります。このようになったのは、やはり、各地方間の気象の違いによるのでしょう。

ついに本格結婚飛行

昨日10日は、庭のクロオオアリの結婚飛行が、おそらく雨が降り出したためと思われますが、中断してしまいました。今日は夕刻ににわか雨はなさそうなので、本格的な結婚飛行が行われるのではないかという期待がありました。
13時過ぎにA巣を見ると、巣口の中に羽アリが見えました。

僅かに羽アリの翅が見える 13時10分撮影

それから30分ほどすると、僅かですが有翅女王アリが地上に出ていました。

13時44分撮影
13時46分撮影

そして、13時46分には、有翅女王アリが1匹飛び立ちました。
所用のため、観察の空白が出来てしまいましたが、15時半前に観察に行くと、既に多くの有翅女王アリが巣口から出ていました。

A巣の最も西側にある巣口の様子 この写真には有翅女王アリが8匹写っている 15時24分撮影
上の写真と同じ箇所の小枝の先の様子 ここにも有翅女王アリが5匹写っている 15時25分撮影

それからは、盛んに有翅女王アリが飛び立っていきました。15時25分から58分までの33分の間に、数えられただけでも30匹ほどの有翅女王アリが空高く飛び立ちました。(この間は、A巣の巣口の中で最も西側にある巣口のみを観察していましたから、東へ1.8mの場所にあるA巣の巣口から出て飛び立った女王アリの数は入っていません。)

15時37分撮影
15時38分50秒撮影
15時38分53秒撮影 上の写真と同じ個体
15時39分撮影
15時49分撮影

ところが16時になるととても急な感じで、結婚飛行が終結していきました。働きアリが、女王アリに巣に戻るよう促したようです。

働きアリが女王アリに巣に戻るよう促しているようだ 16時00分撮影

そして、10分も経たない16時9分には、有翅女王アリの姿が消えてしまいました。

まるで何事もなかったように閑散となった 16時9分撮影

A巣の東側の巣口の周りからも羽アリの姿が消えました。ただ1匹の有翅女王アリが、巣穴へと戻っていきました。

巣穴へ戻っていく女王アリ 巣口の周りには既に羽アリの姿はない 16時10分撮影

ところで、有翅女王アリが姿を消した直後の働きアリの動きを見ていると、その動きには意味があるように思えました。

16時4分から45秒間の動画

小枝に1匹、切り株に5匹ほど働きアリが見えますが、いずれも素早く動き回って、何かを捜しているように見えます。推察するしかありませんが、まだ巣に戻っていない有翅女王アリがいるかどうかを調べているように私には見えたのですが、どうでしょうか。

さて、これでやっと本格的な結婚飛行が行われたようです。昨年は、同じA巣で、5月16日に本格的な結婚飛行を観察しましたから、今年は1ヶ月近くも遅い結婚飛行となります。ただ、以上の観察からも分かるように、今日の結婚飛行は、飛び立った羽アリの個体数からもピークであるとは思いますが、まだ巣の中には有翅女王アリが残っています。昨年は同じA巣で2度目の大きめの結婚飛行を観察していて、その2度目は、最初の結婚飛行の22日後でした。今年もA巣の2度目の大きめの結婚飛行があるのかも知れません。

途中止めになった結婚飛行

岡山市のアメダスによると、6月10日の最高気温は27.7℃(13時30分)でした。14時ごろA巣を見ると、羽アリが出ていないようでした。そこで、昨日に引き続き、今日も結婚飛行はないと思っていました。ところが、念のためにと思い、15時20分ごろA巣を見に行くと、複数の有翅女王アリが、地上を歩いていました。

15時22分撮影

隈無くその数を数えられたわけではありませんが、少なくとも10匹ぐらいはいたと思います。15時24分には、その中の1匹が飛び立ちました。
ところで天気の方は、14時ごろには良く晴れていたのですが、この時は既にどんよりと曇っていました。

15時27分撮影

15時32分になると小雨が降り始めました。そんな中ですが、巣から出てきた有翅女王アリの中には、飛び立たないまま、地上に残っているものもいました。

巣口のすぐ近くの清水白桃の幼木に登った有翅女王アリ 15時36分撮影

他方、巣に戻る女王アリもいました。

女王アリが飛び立った」で紹介しているもう一つのA巣の巣口 巣に戻ってきた女王アリ(中央下) 15時43分撮影

15時44分からは、小雨が雨に変わりました。
自分から巣に戻っていく有翅女王アリを上の写真の女王アリの他にも、もう1匹見ましたが、まだ巣の外にいる有翅女王アリたちは、この雨の中では飛び立てないと考え、地上と清水白桃の木から下りてきた合せて5匹の女王アリをフィルムケースに入れて巣口まで運びました。いずれも、何の躊躇もなくすぐに巣穴の中に入っていきました。その時、巣口の働きアリたちは、身体をぴくぴくと動かしていました。
巣口の外にいた有翅女王アリを人為的に巣に戻したこともあり、16時前後にはもう巣の外には女王アリはいなくなっていましたが、それでも、巣口から少しばかり外に出て、戻るものもいました。

少し外に出て、巣口に戻る有翅女王アリ 16時34分撮影

しかしたった1匹だけでしたが、思い切って外に出ていった有翅女王アリがいました。ただ、急に引っ返してきました。引っ返す瞬間に何があったかは分かりませんでしたが、雨粒が当たったのかも知れません。

急に引っ返してきた女王アリ 塊の下の方の腹部が写っているのがその女王アリ 16時37分撮影

この後、17時まで観察しましたが、上の2つの写真の巣口から出てくる有翅女王アリはいませんでした。
結局この日の結婚飛行は、途中で中断してしまったことになります。
ちなみに、17時から18時にかけては、1時間に3mmの大雨が降りました。

結婚飛行と働きアリ

結婚飛行における働きアリの役割とは、どんなものなのでしょうか。
クロオオアリで観察してみましょう。
結婚飛行中またはその前後の働きアリの動きを次のムービー(6月1日撮影 再録)で見てみます。

16時11分から4分間のビデオ

働きアリと羽アリは巣口の周りに出ていて、働きアリが大きく身体全体をぴくぴくと動かしています。ただ、働きアリが羽アリに接して、そのぴくぴくする動きを伝えているとは限りません。働きアリ同士で動きを伝えあっている場面も多く見られます。

有翅女王アリへの働きアリの働きかけについては、5月26日のブログ「女王アリが出てきた」で取り上げています。
引用:「この写真(下の写真)には、働きアリが有翅女王アリにしているある行為が写っています。よく見ると、働きアリが女王アリの翅を咬んでいるように見えます。写真では分かりませんが、数匹の働きアリが、この女王アリの周りで何らかの働きかけをしていました。想像に過ぎませんが、巣に戻るように働き掛けていたのではないかと思います。」

働きアリの有翅女王アリへの働きかけ 5月26日撮影

次に紹介するムービーでは、結婚飛行を終える時刻になったのでしょう、その時の働きアリが雄アリへ働きかける様子が映っています。画面中央上方を見て下さい。

16時41分から2分20秒間のムービー 6月8日撮影

働きアリが雄アリに巣へ戻るように促したのでしょう。この時巣口から外に出ていた何匹かの雄アリは、巣に戻っていきます。複数の働きアリ同士が申し合わせたかのように、あちこちで雄アリを誘導したかにみえます。

以上の3例の観察から、結婚飛行における働きアリの役割はとても大きいと言えそうです。

女王アリが飛び立った

自宅の庭のA巣で、6月1日に初めて雄アリが飛翔するのを観察しましたが、今日(6月8日)になって初めて有翅女王アリが飛翔しました。

ヤマモモの木に登る有翅女王アリ 15時28分撮影

巣口から出てくるところは見ませんでしたが、気づくと巣口から少し離れたところを急ぎ肢で歩いていました。何回か飛翔を試みていましたが、芝生の上からは飛び立てない様子でした。そこで、近くにあった散水ホースの一部をヤマモモの木の根元に寄せ、その散水ホースへと女王アリを導くと、案の定、そのホースの上を歩き始め、ヤマモモの木の根元に着くと、何のためらいもなく、木に登り始めました。やがて、木の上方で一休みしてから、飛び立ちました。宙に舞うところは見られませんでしたが、おそらく無事に空高く飛び立てたことでしょう。
それからほぼ1時間後の16時半頃、1匹の有翅女王アリが芝生の上を歩いていました。

芝生の上を歩く有翅女王アリ 16時31分撮影

やがて、ビデオ撮影をしていた三脚に上り、一番上から飛び立ちました。

三脚に取り付けたiPadの更に上で飛び立とうとする有翅女王アリ 16時36分撮影

ところでこの日を振り返って見ると、14時過ぎには巣口に羽アリが現れていました。

雄アリの姿が見える 14時13分撮影
女王アリの姿も見える 14時52分撮影

そして、16時台が一番の最盛期のようでした。

16時31分撮影

その時間帯に19匹の雄アリが飛び立つのを見ています。羽アリが現れた巣口は、今日の場合はこれまでの4箇所から2箇所になっていて、その2箇所を交互に見たり、また写真も撮ったりしていましたので、雄アリが飛び立つのを全て見られたわけではありません。ですから、実際にはもっと多くの雄アリが飛び立ったと考えられます。
ところでこの日、羽アリが出てくる新たな巣口を見つけました。

16時44分撮影

この場所は、これまで観察していたA巣の巣口から西へ1.8m離れた場所にあります。

木の切り株の右下に巣口がある

この巣はA巣だと考えられます。(根拠については「「誘拐」されたクロオオアリは巣に戻れるか(1)」を参照)
2匹目の有翅女王アリが現れた時、それまで観察していた巣口からは歩いてくる方向が違っていて、また、巣口を見ていたにも関わらず突然現れた感がありましたが、この新たな巣口を見つけて、疑問が解けたように感じました。この2匹目の有翅女王アリは、この木の切り株の麓の巣口から出てきたのでしょう。
17時頃には、巣口から出ている羽アリはもういなくなっていました。

下のムービーは、16時13分から3分間の巣口の周りの様子を撮影したものです。

16時13分から3分間のムービー 2分55秒の時点で雄アリが飛び立ったと思われるその瞬間が映っている

雄アリが飛び立った

5月29日と30日は、再び蒜山高原へクロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリを採集しに出かけていましたが、1匹も採集できませんでした。
まだコロニーの規模が小さい場合は、羽アリは生まれていません。ですから、羽アリが巣口から現れない巣もあるのですが、どの巣口からも、2日とも午後になっても、羽アリは出て来ませんでした。

5月25日のブログ「2019 蒜山高原」で取り上げたクロオオアリの巣口 5月29日15時40分撮影
羽アリの姿はない 5月30日14時50分撮影

まだ、結婚飛行の時期ではないのでしょうか。そうだとすると、昨年の5月15日、一昨年の5月20日前後とはかなり遅くなっています。

さて、自宅の庭のA巣ですが、5月26日になって初めて有翅女王アリが巣口から出てきたことは既にブログで書きましたが、27日以後を振り返っておきます。

27日の岡山市の天気(但し観測地点は同じ岡山市でも自宅とは9.98km北東にあります)は、
 最高気温(℃)  27.3 (10:40)   最低気温(℃) 17.7 (05:30)
 積算降水量(mm) 0.0       最大風速(m/s) 5.1 (09:20)  積算日照時間(時) 2.2
気温は高めで雨は降りませんでしたが、日照時間から分かるように曇の日でした。この日は終日、巣口に羽アリは出てきませんでした。

28日の岡山市の天気は、
 最高気温(℃)  20.9 (12:50)   最低気温(℃) 15.7 (24:00)
 積算降水量(mm) 6.5       最大風速(m/s) 6.4 (16:50)  積算日照時間(時) 0.0
気温は低めで、降水量や日照時間から分かるように雨の日でした。この日も終日、巣口に羽アリは出てきませんでした。

29日の岡山市の天気は、
 最高気温(℃)  26.3 (17:20)   最低気温(℃) 13.2 (05:30)
 積算降水量(mm) 0.0       最大風速(m/s) 7.0 (17:50)  積算日照時間(時) 7.2
日照時間が長い割には最高気温が26.3℃止まりでした。この日、蒜山高原へ出かけたのですが、13時前に出発しました。出発直前にA巣の様子を見ましたが、巣口に羽アリの姿はありませんでした。おそらくこの日も結婚飛行は行われなかったと思われます。

30日の岡山市の天気は、
 最高気温(℃)  27.6 (14:20)   最低気温(℃) 12.3 (04:20)
 積算降水量(mm) 0.0       最大風速(m/s) 4.9 (15:40)  積算日照時間(時) 12.3
気温は高めで日照時間から分かるように終日晴でした。蒜山高原にいましたが、15時頃、A巣の様子をビデオ通話で見たところ、巣口に羽アリが出ていないようでした。

31日の岡山市の天気は、
 最高気温(℃)  22.6 (11:00)   最低気温(℃) 17.8 (23:00)
 積算降水量(mm) 0.0       最大風速(m/s) 6.2 (12:00)  積算日照時間(時) 0.1
気温は低めで、日照時間から分かるように曇の日で、降水量は0ですが小雨が時々降りました。この日も終日、巣口に羽アリは出てきませんでした。

そして今日6月1日の天気は、
 最高気温(℃)  28.3 (14:40)   最低気温(℃) 15.1 (05:10)
 積算降水量(mm) 0.0       最大風速(m/s) 6.6 (17:00)  積算日照時間(時) 11.7
気温が28℃を越え、日照時間も長くなりました。

13時半頃にA巣を見に行くと、巣口の中に有翅女王アリが見えました。

巣口から外を窺う有翅女王アリ 13時28分撮影

今日は、巣口から羽アリが出てきそうです。それから1時間ほどして再びA巣の様子を見に行くと、これまでになくたくさんの雄アリと働きアリが巣口から出ていました。

14時35分撮影

更に16時頃になると、明らかにこれまでになくたくさんの羽アリが出ていました。

15時57分撮影
同じA巣の別の巣口 15時58分撮影

そこで、16時11分からビデオで巣口の様子を記録することにしました。

16時11分から4分間のビデオ

ビデオの説明
0分12秒 女王アリAの頭部が見え始める
0分36秒 雄アリAが1匹飛び立つ
1分03秒 雄アリBが1匹飛び立つ
1分29秒 女王アリAの全身が見える
1分47秒 女王アリBの頭部が見え始める
1分56秒 女王アリBの全身が見える
1分58秒 女王アリCの頭部が見える
2分01秒 女王アリDの頭部が見える
2分07秒 この前後、4匹の女王アリが同時に映る
2分13秒 女王アリAが巣の中に入る
2分13秒 女王アリCがいったん消える
2分22秒 女王アリCの頭部が見える
2分31秒 女王アリDが巣の中に入る
2分32秒 女王アリBが巣の中に入る
2分40秒 女王アリCの全身が見える
2分56秒 女王アリEの頭部が見え始める EはABCDのいずれかまたは別か特定できない
3分01秒 女王アリCが巣の中に入る
3分15秒 女王アリEが巣の中に入る
以後4分経過まで女王アリは出てこない

このビデオを撮影した僅かの期間が、ちょうど運良く、この日最も盛んな結婚飛行の予兆の時間だったように思います。この日の観察の限りでは、雄アリが僅かですが2匹飛行し、有翅女王アリは4匹確認できました。

それから1時間も経たない17時前から、もうすっかり結婚飛行の予兆はなくなっていました。

16時59分撮影
17時00分撮影

女王アリが出てきた

5月の24日と25日は、オオアリの新女王アリを採集しに出かけていたため、庭のクロオオアリの観察はできませんでした。最高気温は岡山市で、24日は31.6℃、25日は32.3℃でしたので、クロオオアリが結婚飛行を行うには十分な気温でした。ですから、もしかしたらこの2日の間に結婚飛行を済ませているかもしれないという心配がありました。
15時半頃、A巣の様子を見に行くと、たくさんの雄アリが巣口から出ていました。

15時35分撮影

どうやら結婚飛行はまだ行われていなかったようです。
23日までは巣口が確か2箇所のようでしたが、新たにもう一箇所から雄アリが出ていました。

赤丸の辺りからも雄アリが出てきていた

今日は18時頃まで、ずっと観察し続けることにしました。特に雄アリが飛び立つかどうかを見ることにしていました。
ところが、思いがけず、16時過ぎになって有翅女王アリが巣口から外へ出てきたので、女王アリも観察することにしました。

16時03分撮影

有翅女王アリはとても短時間で巣穴の中に戻っていきました。再び現れたのは16時14分で、3度目は16時42分でした。いずれも1匹でした。16時57分には、別の巣口(2つ上の写真の左側上方の巣口)からも1匹現れました。

16時57分撮影

この日最後に女王アリの姿を見たのは17時21分でした。

17時21分撮影

この写真には、働きアリが有翅女王アリにしているある行為が写っています。よく見ると、働きアリが女王アリの翅を咬んでいるように見えます。写真では分かりませんが、数匹の働きアリが、この女王アリの周りで何らかの働きかけをしていました。想像に過ぎませんが、巣に戻るように働き掛けていたのではないかと思います。
それから、10分ほどもすると、巣口の3箇所共に羽アリも働きアリもいなくなってしまいました。念のために18時にも巣口を見ましたが、やはり羽アリの姿はありませんでした。

この日は、結局のところ、有翅女王アリも含め羽アリは1匹も飛び立ちませんでした。
また、この日初めて有翅女王アリが巣口から外へ出てくるのを見ることができ、22日にははっきりしなかった有翅女王アリの存在が確認できました。

2019 蒜山高原

新女王アリを採集するために、蒜山高原へ出かける日を迷っていました。5月16日のブログ「結婚飛行の〈自宅庭と蒜山高原〉の相関」で述べたことは、「自宅の庭でクロオオアリの羽アリを見てから(結婚飛行ではなく)、1週間から10日後に蒜山高原で結婚飛行がある」ということです。そうすると、今年は蒜山高原で結婚飛行があるのは、5月の28日頃から31日頃までの間ということになります。ところが、20日から始まった週は、次第に気温が上がっていき、25日・26日の土日には特に気温が上昇し、平地では30°前後まで気温が上がるとの予報でした。そこで、予想よりも早く、24日に蒜山高原へ出かけました。

例年の採集場所の一つ ヒルゼン高原センター付近

先ず、例年定点的に観察をしているヒルゼン高原センター付近を調べましたが、地面を這っているクロオオアリが少なく感じました。巣もほとんど見つけることができませんでした。
午後になって、昨年多数新女王アリを採集した第1休憩所に行きました。しかし、ここでもほとんどオオアリの巣を見つけることができませんでした。ところが、13時過ぎ、ベンチに腰掛けていると、突然クロオオアリの脱翅女王アリが1匹、目の前に現れました。

クロオオアリの新女王アリ 13時06分撮影

それから、その極近くで何やら運ばれているものがあることに気づきました。死んだクロオオアリの雄アリをクロヤマアリが運んでいました。

死んだクロオオアリの雄アリをクロヤマアリが運んでいた 13時07分撮影

既に結婚飛行があったということになります。けれども、再度第1休憩所全域を隈無く探しましたが、新たに1匹も見つけることができませんでした。
その後、別の休憩所である百合原休憩園地に行きました。ここではクロオオアリの新女王アリを2匹、側溝の中を歩いているところを採集することができました。その採集場所の側溝にはすき間があり、そのすき間を巣口にしているクロオオアリの巣がありましたので、その巣から出てきて、交尾を済ませた女王アリの可能性がありました。
この後に採集したものを合せると、24日は、第1休憩所でクロオオアリの女王アリを1匹、ムネアカオオアリの女王アリを1匹、百合原休憩園地でクロオオアリの女王アリを2匹、ヒルゼン高原センター付近でクロオオアリの女王アリを2匹を採集しました。
翌25日は、第1休憩所でクロオオアリの女王アリを1匹、ムネアカオオアリの女王アリを2匹、道の駅蒜山高原でムネアカオオアリの女王アリを1匹採集しました。
2日間を合せると、クロオオアリの新女王アリは6匹、ムネアカオオアリの新女王アリは4匹となります。

25日に採集したムネアカオオアリの新女王アリ 15時35分撮影

3日目の26日も、気温がとても高くなる予報でしたので、蒜山高原で採集を続けるかどうか迷いました。けれども、結局この2日間で採集を終えようと思い始めていました。
一番の決め手は、結婚飛行の前兆となる巣口の様子です。2日間を通して、巣口に羽アリが出ているところを見ることはありませんでした。そこで、2つの可能性が考えられました。もう既に結婚飛行のピークが終わってしまっているのか、それともこれからなのか ─ どちらにせよ、明日結婚飛行のピークを迎えはしないはずです。
そのように思いかけている時、やっと判断を後押ししてくれそうな巣口に出会いました。

クロオオアリの巣口 今拡張しているところだった 15時12分撮影

道の駅蒜山高原の近くを探索している時、巣穴が大きく空いた巣を見つけました。しかも、雨が降った後でもないのに、土を運び出して巣口を広げていたのです。これは、自宅の庭で5月21日に起こった現象(「巣口に雄アリが出てきた」)と同じです。結婚飛行のための巣口の拡張です。ちなみに、庭では当日に初めて雄アリが巣口に現れました。
2日間で巣口を拡張している巣を見つけたのはこの一例だけでしたので、確言はできないものの、蒜山高原での結婚飛行は既に終わったのではなく、まだ少し先のようです。

参照:最高/最低気温のデータ(蒜山上長田)
    24日 28.4℃ / 6.0℃
    25日 29.3℃ / 7.0℃

22日の巣口の様子

A巣の巣口で、今年初めて雄アリを見た翌日の22日、朝から正午までは巣口にアリの姿はほぼありませんでしたが、13時前になると、巣口にアリが集まるようになりました。

12時49分撮影

13時58分に撮影した写真をコンピュータに取り込んで、穴の中を明るくして見ると、有翅女王アリらしいアリが写っていました。もし、そうであれば、今年初めてカメラで有翅女王アリの姿をとらえたことになります。

有翅女王アリと思われる 13時58分撮影

下の写真は午後3時前に撮影したものですが、今日は昨日と比べて、巣穴から出てくる雄アリは少なくなっていました。

雄アリが僅かしか巣口から出てこなかった 14時57分撮影

巣口に雄アリが出てきた

夜間に雨が降り、朝には晴天になっていました。昨日に引き続き、庭のクロオオアリのA巣とB巣の様子を見に行きました。

B巣 巣口が埋まっている 7時40分撮影

B巣を見ると、案の定、雨のため、昨日大きく空けられていた巣口が埋まっていました。

A巣 7時41分撮影

A巣は巣口がどこなのか分からない状態でした。
昼過ぎになってB巣を見ると、昨日見た巣口とは別の場所に巣口があり、働きアリが外を伺っているようでした。

B巣 12時29分撮影

次にA巣を見ると、巣口周辺が黒っぽくなっていました。たくさんのクロオオアリの働きアリが巣口の周りに出ています。しばらく見ていると、雄アリが見えました。

雄ありが巣口から出たり入ったりしていた 12時40分撮影

別の巣口からも羽アリが出てきているのではないかと思い、近くを見ると、東寄りの下の芝生の中からも羽アリが出ていました。

東寄りの下方にも羽アリがいた 12時40分撮影
左上の褐色の部分と右のコンクリートブロック下方の2箇所から羽アリが出ていた 

この2箇所はかなり近いところにあり、確かめはしていませんが、おそらく同じA巣のコロニーと思われます。
他のクロオオアリの巣からも羽アリが巣口に出ているかもしれないと思い、以前に結婚飛行をしたC巣を見に行きましたが、こちらは巣口の変化も含めて、全く兆候はありませんでした。
夕刻に訪れると、A巣の上方にある方の巣口が広げられていました。しかも随分と広くです。

左上の丸みがある巣口が昼にもあった巣口 その右に通路のような穴が空いている 16時17分撮影

昼からのとても短い時間に巣穴が掘られたことになります。これも結婚飛行に向けての準備なのでしょう。
A巣の下方にある巣口では、昼の様子と同様に羽アリが出ていました。

下方にある巣口 16時18分撮影

この後も様子を見に行きましたが、今日は、雄アリの姿しか見ませんでした。その雄アリも、飛び立つところは見ませんでした。結婚飛行が行われるのは、少し先なのかも知れません。
ちなみに気象庁によると、今日の岡山市の最高気温は25.6℃、最低気温は16.7℃でした。

巣口が大きく開いた

今日になって風が特に強まり、どんよりとした曇り空で、予報よりも遅れて雨がちらつくようになりましたが、雨が強まる前に、庭のクロオオアリの巣の様子を見に行きました。すると、B巣の巣口が広げられていることに気づきました。

B巣の巣口 15時47分撮影

こんな天気のためか、巣穴に働きアリも羽アリの姿も見えませんでした。
A巣はと思い見てみると、はっきりとした変化は見て取れませんでしたが、芝の茎の向こうの巣口が少し広まったようにも感じました。

A巣の巣口 15時47分撮影

結婚飛行が近づいてきているようです。

トゲアリの女王アリを採集(2018年)

例年、自宅から300km離れた彦根市内(滋賀県)でトゲアリの女王アリを採集していましたが、遠地のため、自宅近くで採集できればと思っていました。けれども、9月の上旬が過ぎても採集できないままでいました。そこで、都合のつく14日から、彦根市内へ採集に出かけました。
雨天の合間になった16日に採集場所へ出かけましたが、この間の天候が不順であったためか、地上を歩く女王アリの姿はありませんでした。

従来からの巣のありかの一つ 地上を歩く女王アリの姿はありませんでした 9月16日撮影

18日になり、やっと天気が回復しましたので、採集場所へ出かけました。まだ、地面は濡れている箇所が多く、早朝は結婚飛行に飛び立つには条件が良くなかったように思われました。案の定、この日、採集できたのは1匹だけでした。とても例外的な1匹で、今朝結婚飛行に飛び立った可能性と、以前に結婚飛行を行い、この日まで放浪していた可能性(こちらを参照)があるように思えました。

18日に採集したただ1匹の女王アリ

その翌日の19日は、2日連続の晴の日になり、トゲアリの女王アリが早朝に、結婚飛行を行うことが容易に予想できました。8時過ぎに採集場所へ着いてみると、案の定、たくさんのトゲアリの女王アリが地上を歩いていました。例年最も多くの女王アリが採集できていた狭い範囲の箇所だけで、大半の女王アリを採集しました。また、以前にも採集できていたその他の箇所でも採集でき、10時前までの2時間弱で、41匹を採集しました。

最も多く採集した箇所の環境 フィルムケースを置いている極近辺に多数の女王アリがいた

帰宅後、41匹の内3匹が肢を部分的に失っていたり、不自由であることが分かりました。ちなみに、採集中には、腹部を失ってもまだ生きていた女王アリを1匹と、肢を失っていることが分かり採集しなかった女王アリが1匹いました。蛇足ですが、この日の2時間弱の間に総計43匹の女王アリに出会い、その内4匹の女王アリが、生きている状態で怪我等をしていたことになります。その怪我等の割合は、11.6%程になります。もっとも、怪我ではなく、他にまるごと食べられた女王アリがいた可能性はあります。

この日、40匹程度を採集したのですが、それは、採集目標を予め40匹と決めていたからです。更に時間をかければ、それ以上採集できたでしょう。前日と比べてこれほど多く採集できたことから、今朝結婚飛行が行われたと断定してよいと思います。ただ、この結婚飛行が今年最初であったと断定することはできません。また、今年は9月に入ってから雨天が多かったことを鑑みると、以後にも本格的な結婚飛行が何回かに渡って行われそうです。

同じコロニーの2度目?の結婚飛行

梅雨空の曇天で、小雨が僅かに降ったり止んだりしていました。庭を歩いていてふとB巣の近くでクロオオアリの有翅女王アリを見つけました。更に辺りを見ると有翅女王アリが数匹歩いています。そこで、A巣の方はと思い見ると、かなりの数の有翅女王アリと雄アリが巣から出て歩いていました。結婚飛行です。更に、もしかしてと思い、C巣を見ると、数は少ないのですが、有翅女王アリと雄アリの姿がありました。
5月16日にA巣とB巣で結婚飛行が行われたことは、既にブログに書きましたが、今日はC巣でも結婚飛行が行われようとしていました。これまでの観察から、クロオオアリの場合、結婚飛行が数日に渡って行われることが分かっていますが、5月16日の結婚飛行がメインだと思っていましたので、今回の羽アリの数の多さは意外でした。また、曇天で小雨も僅かですが降っている中での結婚飛行ですから、このことも意外でした。ちなみに気温は25℃程でした。
A巣とB巣の結婚飛行を見たのは今回が2度目ですが、観察できていない日もあったかも知れません。それにしても、5月16日からは、22日も日を空けて結婚飛行が行われたのですから、これも意外なことです。

A巣の様子 15時31分撮影

C巣の様子 15時35分撮影

画面左上から外気温 その下は湿度

結婚飛行を襲うカラス

昨日15日は、蒜山高原でオオアリの結婚飛行がありましたが、自宅の庭のクロオオアリも結婚飛行をしたと思われます。ただ、その痕跡があったわけではありませんが。
本日16日も朝からとてもよい天気でしたので、今日も庭で結婚飛行が見られるのではないかと思っていました。案の定、午前中から巣口で羽アリの姿を見ました。
午後1時前から、巣口の様子をタイムラプス設定で撮影することにしました。再生時に、実際の時間を1/12に短縮します。このブログでは、2分間(実際の時間は24分間)に編集したものと、4分間(実際の時間は48分間)に編集したものを紹介します。いずれも時間内は無編集です。
ところで、撮影時は私は現場を離れていましたので、このタイムラプス動画を後で見るまでは、その間に何が起こっていたのかは知らなかったわけですが、タイムラプス動画を見て、これまでにない発見をすることになりました。それは、私が現場を離れていたからこそ捉えられた貴重な映像でした。
まず、12時54分から24分間のタイムラプス動画(2分間)です。

2分間のタイムラプス動画 12時54分から24分間撮影

この動画では、初めから1分20秒の時点と1分50秒の時点でカラスが現れます。以下は1分20秒時点での時系列のスナップショットです。

カラスがやって来る

1つ目の巣口にくちばしを突っ込む

次の獲物を狙おうとしている

女王アリを1匹捕らえたようだ

2匹目を襲ったところ

くちばしに女王アリを2匹くわえている

次は、15時27分から48分間のタイムラプス動画(4分間)です。

4分間のタイムラプス動画 15時27分から48分間撮影

この動画では、初めから26秒・37秒・3分37秒の時点でカラスが現れます。以下は3分37秒時点での時系列のスナップショットです。

既に女王アリなどを何匹もくわえている

竹串の女王アリを狙う直前

竹串の女王アリを襲った後、巣口にくちばしを突っ込む

とてもたくさん女王アリなどをくわえている

同上 くわえられたアリの姿がよく見える

 

結婚飛行には、こんな危険があったのです。

2018 蒜山高原

2015年10月に現住所に引越してからも、それまでと同様に、オオアリの女王アリを採集するために長野県へも出かけていました。更に、2016年からは、岡山県の県北の蒜山高原へも出かけています。蒜山高原では、2016年の6月11日にクロオオアリの女王アリを13匹、ムネアカオオアリの女王アリを1匹、2017年の5月20日と21日にクロオオアリの女王アリを45匹、ムネアカオオアリの女王アリを10匹採集しています。
今年については、できれば遠方の長野県へは行かずに、蒜山高原だけにしておきたいと思っていました。採集する女王アリの数については、これまでの200〜300匹ではなく、50匹程度でよいとも考えていました。
岡山県の県北を含む5月12日の天気予報では、13日には雨が降り最高気温は17〜18℃程度ですが、14日には最高気温が一挙に10℃近く上がり、更に15日には最高気温が30℃近くまで上がるとのことでした。このことから、オオアリの結婚飛行は14日か、遅くても15日には行われると予想できました。そこで、14日の昼前に自宅を出、蒜山高原へと向かいました。

昨年まとまった数の採集ができた場所(ヒルゼン高原センター付近)へ行ってみると、昨年とは環境が様変わりしていました。

街路樹が切られていた

道路側の街路樹が全て切られていました。ただ花木は残されていました。
巣口の様子を見ると、羽アリの姿がありました。

多くはなかったが羽アリの姿もあった 14時0分撮影

ただ、結婚飛行を始めるには、時間的に少し早過ぎるようです。そこで、夕刻まで別の場所で待つことにしました。午後5時少し前になって、再びこの場所へ行きましたが、まだ結婚飛行は始まっていないようでした。
近くの花木の花を見ると、クロオオアリが来ていました。花の蜜を吸いに来ているのでしょうか。

花の蜜を吸いに来ているのだろうか 17時2分撮影

腹部が膨れているクロオオアリがいました。

腹部が膨れている 17時4分撮影

やはり蜜を吸っていたようです。この花木の花にも蜜があることが分かります。クロオオアリの貴重な蜜源になっているのかも知れません。
結婚飛行の方は、その後も行われませんでした。観察の限りでは、17時18分に雄アリが1匹飛び立っただけでした。

雄アリが1匹飛び立つのが見られた巣口 17時18分撮影

2日目の5月15日、昨日はヒルゼン高原センター付近でしか観察していませんでしたが、昼過ぎになって、別の場所にも行って見ました。

休憩所

そこは、以前ムネアカオオアリの働きアリを見かけた場所でした。案の定、今年もムネアカオオアリの働きアリが歩いていました。そうこうしている内に、ふとクロオオアリの女王アリの羽アリが駐車場を歩いているのを見つけました。

クロオオアリの羽のある女王アリ 13時12分撮影

更に、公園内でムネアカオオアリの女王アリも見つけました。

ムネアカオオアリの女王アリ 13時21分撮影

それからは、次々とオオアリの女王アリを採集することができました。午後4時にいったんこの場所での採集を止め、ヒルゼン高原センター付近へ行きました。
ここでは、もう結婚飛行は終わっていたのか、巣口に羽アリの姿はありませんでした。ですが、結婚飛行を終えて歩いているクロオオアリの女王アリを11匹採集しました。ただ、昨年とは大きな違いがあり、ムネアカオオアリの女王アリは1匹もいませんでした。また、採集できた数が少なかったという違いもあります。
ヒルゼン高原センター付近での採集を30分間ほどで終え、再び休憩所へ戻りました。午後5時頃になって、腹部を失ったムネアカオオアリの羽アリを見つけました。

腹部のないムネアカオオアリの女王アリ 17時5分撮影

この腹部を失ったムネアカオオアリの有翅女王アリについては、昨年ヒルゼン高原センター付近で多数見つけています。この事変はよくあることなのでしょうか。

今回の採集旅行では、クロオオアリの女王アリは96匹(休憩所85匹、ヒルゼン高原センター付近11匹)、ムネアカオオアリの女王アリは11匹(休憩所のみ)採集できました。クロオオアリの方は十分な数が採集できたことになります。ムネアカオオアリの方はもっと採集したいところですが、今年の採集旅行は、この1回だけで終えることにしました。

女王アリが出てきた

昨日は終日雨、今日の朝は曇っていました。今日は朝から、飛び石をB巣の辺りに敷く予定にしていました。作業を始めようと、B巣の辺りに行ってみると、1匹のクロオオアリの女王アリが歩いていました。

クロオオアリの女王アリが歩いていた 5月8日9時23分撮影

他にもいるのではないかと、辺りを見回しましたが、この1匹だけでした。B巣では、昨年は5月18日に、一昨年は5月27日に結婚飛行を観察しています。今日は結婚飛行をするには、まだ少し時期が早いようです。
1時間後、近くの巣口を覗いてみると、雄アリの姿が見えました。

写真には雄ありが2匹写っている 5月8日10時23分撮影

さて、飛び石ですが、このB巣を出入りする働きアリを保護するために敷きます。

敷石を敷いたところ

B巣の巣口は、上の写真の敷石の左横にあり、ほとんどのアリは写真右のフェンスとの間を行き来します。昨年の中頃までは、まだ芝生が今ほど広がってはなく、地面を歩くアリが見つけやすかったのですが、芝生が広がってくると、芝生の中を歩くアリは、見つけにくくなっていました。そこで、ここを歩く際には、細心の注意を払っていました。これを解消するために、敷石を敷いたのです。この敷石は、20cm四方の大きさのトラバーチンという岩石で、片足を置くだけなら十分な広さがあります。白っぽいトラバーチンなので、クロオオアリがこの石の上を歩いていると分かり易く、うっかり踏んでしまうことはなくなるでしょう。

蒜山高原へ

今回の採集の舞台となるヒルゼン高原センター付近

5月19日(金)の天気予報では、20日と21日は気温が上がり、蒜山(岡山県北)でも30℃近くになるとのことでした。ここまで気温が上がると、オオアリの羽アリが結婚飛行を行う可能性がとても高くなると思われます。そこで、急遽、蒜山高原へ採集旅行に出かけることにしました。
20日の午前中に自宅を出、11時過ぎに現地に着きました。昨年、ムネアカオオアリが1匹採集できたヒルゼン高原センター近くの場所で、オオアリの女王アリを探していると、運良く1匹見つけました。クロオオアリの女王アリです。同じ種のクロオオアリの働きアリから攻撃を受けていました。

クロオオアリの働きアリに右触角を咬まれている 11時41分撮影

既にこの場所ではクロオオアリの結婚飛行が始まっていたことが分かります。午前中の発見ですから、この女王アリは昨日結婚飛行をしたのでしょう。
辺りを詳しく探しましたが、女王アリはこのクロオオアリの女王アリ1匹だけでした。
その後、夕刻まで、昨年オオアリの女王アリが採集できた蒜山高原内の他の箇所を回ってみましたが、1匹も採集できませんでした。
夕刻になって、再びヒルゼン高原センター付近に行ってみると、羽アリが巣口から出ていました。巣が密集しているところでは、およそ10mの範囲に複数の巣口がありました。

複数の巣口の一つ 16時39分撮影

複数の巣口の一つ 16時48分撮影

複数の巣口の一つ 樹の根元から出ていた 16時54分撮影

5時半頃になると、よりたくさんの羽アリが出てくるようになりました。

直前の写真と同じ場所 羽アリの数が増えてきている 17時23分撮影

幹を上っていく女王アリ 17時23分撮影

ところで、その間に奇妙なことに出会いました。その一帯を歩いて女王アリを探していたのですが、翅の付いたムネアカオオアリの女王アリが地面を歩いていました。

腹部が無くなっている 17時4分撮影

よく見ると、腹部が全くないのです。それでも元気に歩いていました。どうしてこのようなことになったのでしょう。この1匹だけかと思っていましたが、次々と同じことに出会うのです。

3匹採集した時点で撮影 17時15分撮影

結局この日、同様に腹部を失って地面を歩いていたムネアカオオアリを22匹も見つけました。見つけた場所は、このブログ冒頭の写真に写っている歩道兼自転車道と、下写真の道路を隔てた広々とした駐車場です。

駐車場 写真右奥には使われなくなった更に広い駐車場がある

広範囲に亙って見つかったこと、また駐車場も含めムネアカオオアリの巣がない場所で見つかったこと、翅を落とした腹部のない女王アリは見つからなかったことから、巣口で何者かに狙われたのではなく、飛行中に襲われたと考えられるでしょう。それにしても、他に体に怪我もなく、見事なほどに腹部のみがないのです。

翌日21日は、早朝から採集を始めました。気温は12°前後でした。

5時38分の気候

ヒルゼン高原センター周辺を大きく一回りしました。そうすることで分かったことは、前日にオオアリを採集した付近が最もクロオオアリの巣の密度が高いということと、近くに雑草や樹のない芝生のみの箇所では、クロオオアリの働きアリはほとんど見られないということです。逆に、下の写真のような環境(雑草や樹がある)にはクロオオアリが棲息していました

こうした環境(雑草や樹がある)のところにはクロオオアリがいた

さて、2日間を通してクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリを合せて55匹採集しました。採集した箇所のほとんどは冒頭の写真の箇所で、写真に写っていない反対側の歩道と自転車道を含みます。歩道と自転車道の横には雑草が生えていますが、そこでは採集していません。そこにも、翅を落とした女王アリがいるとは思いますが、雑草に隠れて姿が見えないのでしょう。
不思議に思うのは、道路を隔てた広々とした駐車場には、1匹も翅を落とした女王アリがいなかったことです。歩いていれば、とても簡単に見つけられますから、本当にそこにはいなかったと言えます。結婚飛行で、空中高く飛び上がれば、交尾後どこにでも地面に落ちてくるように思うのですが、そうなってはいなかったのです。これは、今回の偶然なのでしょうか。
また、比較的数多く女王アリが採集できた箇所は、既述のおよそ10m程の範囲ですが、空中高く飛び上がったとすれば、この場所に降り立つことはないでしょう。考えられることとしては、他巣が近くにあるため、空中高く飛び上がることなく交尾をしたのではないかということです。
長野県でクロオオアリの巣が密集している場所で採集した際も、クロオオアリの巣の極く近くで翅を落とした女王アリを多数採集しました。どうしてこのようになるのか、とても興味深いことです。

ついに結婚飛行

昨日は午後遅くから雨が降りだし、今日はよく晴れた日になりました。今日からはしばらくの間、良い天気が続き、気温も上がるとのことでした。いよいよ、クロオオアリの結婚飛行が行われそうです。少なくとも明日以降の金・土・日の間には、結婚飛行が行われると思っていました。
午後になってからは、飼育しているアリの世話をしていて、午後3時半頃になって、庭に出てB巣の様子を見に行きました。
すると、既に結婚飛行が始まっていました。たくさんの羽アリが出てきていた巣口は2ヶ所でしたが、「いよいよ結婚飛行の季節」で書いている巣口とは違っていました。以前のその巣口が6日前に何者かに襲われたので、別の巣口を利用するようになったのでしょう。(「何者かに襲われたクロオオアリの巣」参照)

15時37分撮影

上写真の巣口とは違う同じB巣の巣口 15時53分撮影 クリックして動画を見る(30秒間のタイムラプス動画)

庭の別のクロオオアリの巣では、羽アリが出てきていたのは、C巣のみでした。

わずかに雄アリの姿があった 15時58分撮影

1ヶ所から、わずかに雄アリが出てきていただけで、飛び立つ様子ではありませんでした。

塚山公園にも出かけました。大変期待をして出かけたのですが、「結婚飛行が始まった」で触れている巣は、結婚飛行を行っていませんでした。他の場所にあるクロオオアリの巣口もひっそりとしていました。注意深く公園内を歩いて、翅を落として地面を歩く新女王アリを探しましたが、見つかりませんでした。

巣口に羽アリが見えるが出てくる様子はなかった 16時21分撮影

5時前に自宅に戻り、B巣の様子を見ると、既に結婚飛行を終えているようでした。

結婚飛行を終えているようだ 16時54分撮影

結婚飛行を終えているようだ 16時55分撮影

今日飛び立った新女王アリが翅を落として地面を歩いているでしょうか。自宅の庭の地面を注意深く探しましたが、全く見つかりません。遠くへ飛んでいったのでしょう。
まだ見つけたことがないのですが、もし自宅周辺にクロオオアリの巣があるとすれば、今日結婚飛行を行った可能性があります。そこで、自宅周辺の山道を歩きましたが、やはり新女王アリの姿はありませんでした。

冷凍庫の中で生きていた雄アリ

今年捕虫器を新たに購入して使っています。この捕虫器は、以前から使っている捕虫器よりもずっと多くの虫を捕らえることができます。

SURE 屋内用捕虫器 MC-8200

SURE 屋内用捕虫器 MC-8200

さて、7月14日の深夜近く、この捕虫器の網の中をのぞいてみると、とてもたくさんの雄アリが入っていました。更に女王アリらしき羽アリもちらっと見えたような気がしました。改めて懐中電灯で捕虫器のあたりを探すと、羽アリがいっぱい壁などについていました。また、働きアリも集まっていましたので、まず雄アリと働きアリを採集し、女王アリを探しました。女王アリはなかなか見つかりませんでしたが、やっと1匹を採集しました。更に、翅を落として歩いている女王アリがいないかも探しましたが、1匹も見つかりませんでした。
捕虫器本体から捕虫網を外し、網ごと冷凍庫に入れておきました。

翌日、冷凍庫から取り出して実体顕微鏡で見たのが次の写真です。

中央に女王アリが見える

中央に女王アリが見える

上と同じ種のように見える女王アリ

上と同じ種のように見える女王アリ

上2つとは別の種のように見える女王アリ トビイロケアリかもしれない

上2つとは別の種のように見える女王アリ こちらはトビイロケアリかもしれない

とてもたくさんの雄アリの中にわずかに3匹女王アリを見つけました。これらは2つの種のようです。
捕虫網の中ではなく、壁にいた女王アリは冷凍しませんでしたので、翌日も生きていました。

体が茶色でトビイロケアリのようにです

体が茶色でトビイロケアリのようだ

こちらは、網の中にいた1種と同じトビイロケアリの女王アリのように思います。働きアリも採集したと書きましたが、アミメアリでしたので、これら羽アリを捕まえる為に集まってきていたのでしょう。

さて、実体顕微鏡を通して上の写真を撮っている時、死んでいるはずの死骸の塊が動くような感じがありました。急激な気温の変化や風のようなもののためと思っていましたが、やがてそうではなく、死んでいるはずの雄アリの脚がかすかに動いているのに気がつきました。そこで、くまなく探してみると、足が動いている雄アリが13匹まで見つかりました。

13匹の雄アリがまだ生きていた

13匹の雄アリがまだ生きていた

これは、驚きです。冷凍庫の中に18時間程度入れておいたのですから、体内の全ての水分が凍り、死ぬはずなのですが。この日は数こそ多くはなかったとはいえ、他の昆虫も捕獲されていたのですが、これら雄アリ以外は動き出す昆虫はいませんでした。

結婚飛行後の分かれ道

女王アリは結婚飛行を終えた後、どうするのでしょうか。

交尾を終えると地上に舞い降り、すぐに翅を落とします。そして、歩き回ります。その目的は、巣を作る場所探しで、場所を定めると穴を掘り始めます。

穴を掘り始めたクロオオアリの女王アリ 6月2日

穴を掘り始めたクロオオアリの女王アリ 6月2日

おそらく本能に忠実な「正常な」女王アリは、結婚飛行を終えたその日の暗くなるまでには、穴を掘り始めます。そして、翌日の午前中には、穴の中に入っています。

翌日6月3日の午前10時半頃

翌日6月3日の午前10時半頃

それでは、穴が見つかったので、いたずらをしてみましょう。何か細い物を穴の中に突っ込みます。でも、女王アリは慌てて出てくるということはありません。穴の中の方が安全なのでしょう。そこで、芝の穂(花)を穴に突っ込んで少ししつこく動かしてみます。

芝の穂(花)

芝の穂(花)

すると、咬み付いた感触があり、そこでさっと引き上げます。女王アリが釣れています。他の穴でもやってみると、やはり女王アリが釣れました。

さて、結婚飛行後の女王アリたちの運命はまちまちです。本能に従い、「正常に」穴を掘り収まったものは、ひとまず安全を手に入れたことになります。しかし、穴の出入り口は、掘り始めた次の日もふさがっていないことがあったわけですから、その穴にいろいろなものが入ってくることは考えられます。ですから、穴を掘っている途中で、あるいはひとまず穴が完成してからも、穴から逃げ出さなくてはならないこともあるでしょう。また、掘り始めたものの、運悪く少し掘った時、石などの固いものがあれば、また別の場所を掘り直さなくてはなりません。

このようなこともあってか、夜中中地面を歩き回って、次の日も歩き回っている女王アリがいるのでしょう。地面を歩き回ることは、さまざまなリスクが伴い、とても危険です。怪我をしている女王アリの割合が、3日の日には多かったように思うのですが、実際に危険が多いと言えるでしょう。

クロヤマアリに襲われています

クロヤマアリに襲われています

上の写真は、クロヤマアリに襲われているところです。ただ、女王アリが何らかの理由で死んでいて、その死体に群がったのかも知れません。

とにかく暑い日です。太陽はかんかんと照っていました。歩き回った後は、休憩も必要です。できるだけ安全な葉の上などで休むこともあるようです。

葉の上で休む女王アリ

葉の上で休む女王アリ

また、のどが渇ききっているのでしょう、採集した女王アリが、すぐに湿った脱脂綿に口を着けることもよくありました。