「アリたちの広い活動スペースを作りたい。その中には、いつも水があり、蜜のある植物も育っている」─ そんな構想を、かなりの以前から持っていました。それをどんな形で実現するかを最近になって考えてきました。そうしてできあがったのが、「アンテグラウンドⅠ型」です。

アンテグラウンドⅠ型全体像
大きさは、450mm×600mm規格のアクリル板を使って、底面積が最大の大きさになるように作りました。
このアンテグラウンドⅠ型は、大きくは4つの部分から構成されています。
○本体(水色の部分)
○クリーナーボックス(黄色の部分)
○リフト(下の茶色の部分)
○プラントライト架台(外側の部分)

本体・クリーナーボックス・リフトの正面図

本体・クリーナーボックスの側面図
本体の中には15cm立法の水槽を入れ、濾過器をつけてメダカを飼います。

メダカは5匹入れた
この水の中にアリが廃棄物を入れたとしても、メダカの餌になって、水は腐らないでしょう。これで、アリが水を汚すことによる水変えは、必要でなくなります。またこの水は、アリの飲料水になります。水が飲みやすいように、水槽には水面に達する木製のスロープを取り付けています。

木製のスロープ クロオオアリは水辺が好きなようだ
その水槽の中のメダカに餌を与える際、蓋を開けることなく給餌できるように、蓋に穴を空けてガラス製のロートを設置しました。また、水槽の水を補給する際にも使います。

本体の蓋に径6mmの穴を空けロートを通している ロートの穴はシリコン栓で塞いでいる
水槽からは、絶えず水蒸気が出ているはずです。ところが、アクリルは水を容易に吸収し、湾曲します。すると、飼育ケースにすき間ができやすい状態になります。そこで、本体の空気を換気することにしました。取り付けたのは、4cm四方の小さなミニ送風機です。これは、コンピュータ用の冷却ファンで、USB電源で動きます。

ケースの中の空気を吸い出すようになっている

この他に何も取り付けない蓋もある
ミニ送風機の下のアクリル板には、1.5mm径の穴を多数空けています。この穴の大きさでは、クロオオアリの働きアリはくぐり抜けることができません。
ところで、ケースの中に何か物を入れる際に便利なようにある工夫をしています。それが、右側の蓋にあるアントピットです。これは傾斜のある落とし穴になっていて、例えば脱走したアリなども楽にケースの中に落とし入れることができます。

傾斜の角度は60°になっている
もちろんこのアントピットには、ケースの中から出てこられないように穴を塞ぐ蓋もついています。
さて、冒頭に書いた「蜜のある植物」も本体の中に入れています。

イチゴの苗 土の替わりになっているのがハイドロボール 肥料としては水耕栽培に有効な液肥を使っている
植物の選定には少し迷いました。本体ケースの高さの内法は22cmですから、背が高くなる植物は入りません。花外蜜腺のある植物なら、長い間蜜が集められそうでしたが、背が低い植物は見当たりませんでした。そこで、長い間に渡って花が咲き、花に蜜があり、実もできる植物として、品種名が「トスカーナ」という赤花イチゴにしました。
そのイチゴを育てるために、プラントランプを使います。2つ前の写真には、プラントランプの光がアクリル板に反射して写っています。
ところで本体の底面には1.5mmの穴を空けています。

本体底面には1.5mm径の穴が多数ある
自然界では雨が降って汚れが流されますが、同様に、本体が汚れた時に水で洗うためです。汚れを含んだ水は、この1.5mm径の穴から下へと流れ落ちます。その水を受けるのがクリーナーボックスです。クリーナーボックスは、本体の下部21mmの部分の周囲を囲んでいて、水が決して外には漏れ出さないようになっています。クリーナーボックスに水が溜まると、クリーナーボックスを本体から離して水を捨てると便利です。それには、本体を上方へ持ち上げて固定すれば良いわけです。

本体を持ち上げた時
最初から2番目の図と比べて見て下さい。上図の濃い茶色の部分は非固定の木材で、リフトと本体との間に挟むことで、本体を30mm持ち上げることができます。こうすることによって、クリーナーボックスを本体下から取り出せるようになり、その中の水を捨てることができるようになります。
このアンテグラウンドⅠ型には、左右にそれぞれ2つのアクリルパイプがついていて、クロオオアリのコロニーとホースで繋ぎます。右側にあるアクリルパイプの1つには、S/N:B110608-07のクロオオアリのコロニー(2011年6月8日に新女王アリを採集)を、左側のパイプには、S/N:B15006のクロオオアリのコロニー(2015年5月27日に新女王アリを採集)を繋げました。これまで、人工飼育下では、一つの空間を2つのコロニーが共有するということはありませんでしたので、何か新しい発見があるかも知れません。

