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羽化が始まった「たった1例のトゲアリの寄生」

今年の6月3日のブログで、
「昨年の9月22日のブログ「たった1例のトゲアリの寄生を試みる」で紹介しているトゲアリの女王アリ(S/N:T180919)が寄生したクロオオアリのコロニー(S/N:B15002)の5月5日以後の様子ですが、卵と孵化してまもない幼虫がいました」
と書きましたが、今日7月28日になって、トゲアリの働きアリの羽化が始まっているのに気づきました。この間、ほぼ毎日観察していましたので、数日前から見落としていたのか、それとも極直近に羽化したのかどちらかでしょう。働きアリを見ると、色がまだ薄いのもいます。

羽化したばかりなのでしょう、体色がまだ薄い 14時59分撮影

トゲアリの女王アリはじっとはしてなくて、よく歩き回っていました。

トゲアリの女王アリはじっとはしていないようだ 上段にもトゲアリの働きアリがいる 15時0分撮影

働いているトゲアリの働きアリもいました。

幼虫を運んでいる 左のまだ小さな幼虫の塊はトゲアリの幼虫のはず 15時2分撮影

トゲアリの働きアリの数を数えて見ると、6匹確認できました。

アリは水場が好き?!

もうずっと以前から、特にムネアカオオアリは、人工的な飼育下では、水があるところに集まってくることは分かっていました。

ムネアカオオアリ 5月6日撮影

上の写真では、ペットボトルの蓋の水の中には入っていませんが、水が浅い場合は肢下が水に浸かるようにペットボトルの蓋の中に入っていることがよくあります。
アンテグラウンドⅠ型Ⅱ型では、ケースの中に水槽を入れていますが、この水槽の水辺にもクロオオアリとトゲアリが集まってきます。

トゲアリ アンテグラウンドⅡ型の中の水槽 5月6日撮影
クロオオアリ アンテグラウンドⅠ型の中の水槽 6月4日撮影

ちなみに、アンテグラウンドで飼育しているクロオオアリとトゲアリは、他に水を与えていないので、この水槽の水を飲んでいることになります。

「たった1例のトゲアリの寄生」に卵と幼虫

昨年の9月22日のブログ「たった1例のトゲアリの寄生を試みる」で紹介しているトゲアリの女王アリ(S/N:T180919)が寄生したクロオオアリのコロニー(S/N:B15002)の5月5日以後の様子ですが、卵と孵化してまもない幼虫がいました。既に昨年の寄生時にクロオオアリの女王アリは殺されていますので、これらの卵と幼虫はトゲアリの幼生虫です。

左の大きな幼虫は昨年孵化したクロオオアリの幼虫と思われる 中央右の卵と孵化したばかりの幼虫はトゲアリの幼生虫 6月3日11時31分撮影
中央の卵塊がトゲアリの卵 6月3日11時33分撮影

飼育中のトゲアリの様子 2019年5月

昨年の10月11日のブログで、その時点で飼育していたトゲアリの3つのコロニーについて触れていますが、昨年寄生に成功したトゲアリも含めて、その後の様子について触れておきます。

① S/N:T140906-40
最も良く繁栄しているコロニーです。トゲアリの女王アリを2014年9月6日に採集し、同年9月11日にクロオオアリの巣S/N: NESTCON01024(2012年6月14日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから4年8ヶ月程経過したことになります。
今年の1月29日から特製の飼育ケースに入れ、後日アンテグラウンドⅡ型に繋げています。幼生虫が多数見られます。

S/N:T140906-40

② S/N:T130921-09
順調に繁栄することが期待できるコロニーです。飼育器の水槽の中に置いたアクリルと木で作った巣箱の中にコロニーが入っています。この巣箱には、閉ざされた空間があり、側面の1つの穴からのみ出入りできるようになっています。トゲアリの女王アリを2013年9月21に採集し、同年10月3日にクロオオアリの巣S/N:NESTCON01030(2011年6月8日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから5年7ヶ月程経過したことになります。幼生虫が多数見られます。

S/N:T130921-09

③S/N:T140906-03
働きアリが少ないコロニーです。これまでは、上述のアクリルと木で作った巣箱の中には入らず、巣箱の下の土とのすき間で暮らしていましたが、今年になって巣箱に入りました。トゲアリの女王アリを2014年9月6に採集し、同年9月10日にムネアカオオアリの巣S/N:NESTCON01027(2012年6月14日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから4年8ヶ月程経過したことになります。幼生虫がいるかどうかは確かめられませんでした。

T140906-03

④S/N:T180919
昨年新たに寄生に成功したトゲアリの女王アリ(S/N:T180919)とクロオオアリのコロニー(S/N:B15002)です。(「たった1例のトゲアリの寄生を試みる」等を参照)
B15002の巣がある人工巣リトルアンテシェルフを小型水槽の中に入れています。

人工巣を小型水槽の中に入れている

人工巣の中では、多数のクロオオアリの幼虫が見られます。

クロオオアリの幼虫が育っている

トゲアリの女王アリも健全のようです。腹部がよく膨れています。既に産卵が始まっているのかも知れません。

トゲアリの女王アリの腹部がよく膨らんでいる

トゲアリが作る不思議な模様

もう少し前から、トゲアリの飼育ケースの中に不思議な模様が見られるようになっていました。今年の2月12日のブログ「アンテグラウンドⅡ型」で紹介したそれは、底部が白いアクリル板になっています。これまでもその不思議な模様があったのかも知れませんが、床が白いことで、はっきりと見えるようになったのでしょう。

不思議な模様 5月2日撮影

いったいこれは何なのでしょうか。当初は、ガなどの幼虫を餌として与えた時のガの体液なのではないかと思ったこともありましたが、ガなどの幼虫を与えていない時にも付いていましたし、模様が至る所にできていることから、そうではないことが分かってきました。これは、トゲアリの排泄物なのでしょう。いつかその模様ができるその場を見られるとよいのですが。
ちなみに、クロオオアリでは、排泄物が模様になって見えることはなく、そもそも排泄物そのものがないかのように見えます。

アリはアブラムシを食べるか?

ここでは、カラスノエンドウに付くアブラムシを使います。複数本の茎の先端付近に付いているアブラムシを採集し、冷凍庫で凍死させます。マメアブラムシとソラマメヒゲナガアブラムシが混在しています。

小さめで色が濃いのがマメアブラムシ、大きめで緑色をしているのがソラマメヒゲナガアブラムシ

クロオオアリとトゲアリで調べてみましょう。クロオオアリの場合は、これまでの経験から、アブラムシは食べないだろうと予想できます。
4月24日、アンテグラウンドⅡ型をフィールドにしているトゲアリ(S/N:T140906-40)にアブラムシを与えました。

9時27分撮影

巣へと運んで行きます。

アンテグラウンドⅡと巣とを結ぶシリコンホースの中をアブラムシを咥えて進むトゲアリ

アンテグラウンドⅠ型をフィールドにしているクロオオアリ(S/N:B15006)にアブラムシを与えました。

9時31分撮影

アブラムシを咥えて運び始めましたが、巣口へと結ぶシリコンホースとは反対の方へ進み、アブラムシを置きました。その場所は、このクロオオアリのコロニーがごみ捨て場にしている場所です。

もう何匹もアブラムシがゴミとして捨てられている 9時35分撮影

それから2時間以上が経つと、アブラムシを入れて与えた容器の中のアブラムシは全て運び出されていました。

トゲアリの場合 11時44分撮影
クロオオアリの場合 11時44分撮影

トゲアリでは、アンテグラウンドⅡ型の中にアブラムシは残っていませんでしたが、クロオオアリでは、アンテグラウンドⅠ型の中にたくさんのアブラムシが捨てられていました。

アンテグラウンドⅠ型の中に捨てられたアブラムシ 11時45分撮影

以上の観察から、クロオオアリはカラスノエンドウに付く2種のアブラムシは食べませんが、トゲアリはこの2種のアブラムシを食べると考えられます。ただ、トゲアリの一つのコロニーだけの観察では、一般化するには不十分ですから、トゲアリの他のコロニー(S/N:T130921-09)で追試をしてみました。

15時01分撮影

すると、巣へと運んでいきました。

アブラムシを咥えて巣へと運んでいくトゲアリ 上方の丸い穴が巣口 15時3分撮影

以上の観察から、トゲアリはカラスノエンドウに付く2種のアブラムシを食べると考えられます。

アンテグラウンドⅡ型

トゲアリS/N:T140906-40用にアンテグラウンドⅡ型を作りました。アンテグラウンドⅡ型はアンテグラウンドⅠ型を次の点で簡略化しています。
 ○クリーナーボックス(本体の下に設けた水掃除用の水受け)をなくしました
 ○リフト機能(クリーナーボックスをとり出す際の機能)をなくしました
他は、アンテグラウンドⅠ型と同様の仕様になっていて、水槽(トゲアリの水飲み場になる)、プラントランプ(植物栽培用)、送風ファン(ケース内の湿気を排出し、アクリル板が湾曲しないようにする)、アントピット(給餌したり、逃げ出したアリを落とし入れる)、給餌・給水ロート(メダカに餌を与えたり、水を補給する)を備えています。

アンテグラウンドⅡ型には、1月29日のブログで紹介したトゲアリの飼育ケースを繋げています。

中央に見えるのがトゲアリの飼育ケース アンテグラウンドⅡ型とシリコンホースで繋がっている
正面図
側面図


トゲアリの飼育ケースを作る

昨年の10月11日のブログ「飼育中のトゲアリの様子 2018年10月」で紹介しているS/N:T140906-40用に特製の飼育ケースを作りました。S/N:T140906-40は、現在飼育しているトゲアリのコロニーの中では、一番大きなコロニーで、更に大きなコロニーになるよう、飼育環境を改善したいと考えていました。そこで、アンテグラウンドⅠ型を改良したアンテグラウンドⅡ型を作り、今回作製した飼育ケースをアンテグラウンドⅡ型と繋げる予定にしています。

たった1例のトゲアリの寄生のその後 3

これまで、トゲアリの女王アリに殺されたはずのクロオオアリの女王アリの姿を見かけませんでしたが、10月18日にそれらしき遺体を見つけました。飼育器であるリトルアンテシェルフの最下層のごみ捨て場で、2匹のクロオオアリの働きアリが、黒いものに触れていました。それを取り出して実体顕微鏡で見ると、確かにクロオオアリの女王アリの遺体でした。胸部のみになっていて、女王アリの証の翅を落とした跡が確認できました。

クロオオアリの女王アリの遺体 胸部のみが見つかった 翅を落とした痕跡が見られるので、確かに女王アリの胸部だ

「直短的社会寄生」の試みは課題を残して終了

昨年の9月から始めたトゲアリの女王アリの「直短的社会寄生」の試みは、端的に言えば失敗に終わりました。以下にトゲアリの女王アリが死亡した日を記します。

S/N T17002:2017年09月30日(死亡時トゲアリの働きアリ28匹)
S/N T17008:2017年10月15日(死亡時トゲアリの働きアリ5匹)
S/N T17007:2017年10月17日(死亡時トゲアリの働きアリ5匹)
S/N T17001:2017年11月11日(死亡時トゲアリの働きアリ11匹)
S/N T17005:2018年02月12日(死亡時トゲアリの働きアリ21匹)
S/N T17006:2018年06月10日(死亡時トゲアリの働きアリ4匹)
S/N T17003:2018年07月05日(死亡時トゲアリの働きアリ0匹)

ただ唯一、S/N T17004はトゲアリの働きアリが1匹ですが、生き残っています。

T17004は働きアリが1匹ですが生き残っている

T17004では、今年の6月23日に卵らしいものを女王アリが咥えていたのを観察しています。しかし、6月30日には卵は見つかっていません。

女王アリの死亡時に1例を除いて働きアリが生き残っていましたので、今回の試みでは、働きアリがいなくなると女王アリがコロニーを作れなくなると言うことではないのですが、働きアリの寿命を考慮する必要はあったようです。直短寄生をした次の年の春に最初の産卵をしたとして、その卵から成虫になるのが早くて7月になってからだとすると、働きアリの寿命は少なくともその時点で10ヶ月になります。実際には、採集してきた働きアリは、前年の9月以前に生まれているのですから、更に長い寿命でなくてはならないことになります。ですから、「直短的社会寄生」の試みでは、働きアリの寿命も考慮してコロニー作りを行うことも、今後の課題になることでしょう。

飼育中のトゲアリの様子 2018年10月

昨年の6月16日7月2日のブログで、その時点で飼育していた13コロニーのトゲアリについて触れていますが、その後多くのコロニーが死滅し、今年の10月11日の時点では、3コロニーのみが生き残っています。コロニーを引越させはしましたが、多くのコロニーが死滅した確かな要因は分かっていません。

生き残っている3コロニーの様子
① S/N:T140906-40
最も良く繁栄しているコロニーです。トゲアリの女王アリを2014年9月6日に採集し、同年9月11日にクロオオアリの巣S/N: NESTCON01024(2012年6月14日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから4年1ヶ月程経過したことになります。

S/N:T140906-40

② S/N:T130921-09
順調に繁栄することが期待できるコロニーです。飼育器の水槽の中に置いたアクリルと木で作った巣箱の中にコロニーが入っています。この巣箱には、閉ざされた空間があり、側面の1つの穴からのみ出入りできるようになっています。トゲアリの女王アリを2013年9月21に採集し、同年10月3日にクロオオアリの巣S/N:NESTCON01030(2011年6月8日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから5年1ヶ月程経過したことになります。

S/N:T130921-09

③S/N:T140906-03
働きアリが少ないコロニーです。上述のアクリルと木で作った巣箱の中には入らず、その下に小さな空洞を作って暮らしています。トゲアリの女王アリを2014年9月6に採集し、同年9月10日にムネアカオオアリの巣S/N:NESTCON01027(2012年6月14日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから4年1ヶ月程経過したことになります。

T140906-03

たった1例のトゲアリの寄生のその後 2

9月22日に寄生を開始させたトゲアリのその後の様子です。
4日のブログと大きな変化はありませんが、2分間の動画にしてみました。

8時50分からの2分間動画

トゲアリの女王アリは、すっかりクロオオアリのコロニーの中に入り込んでいるようです。この動画を撮影した時は、トゲアリの女王アリはクロオオアリの塊の上にいて、それほど盛んにではありませんが、化粧をしていました。このクロオオアリの塊の下に殺されたクロオオアリの女王アリの死体がありそうです。

たった1例のトゲアリの寄生のその後 1

寄生から8日後の9月30日のトゲアリの寄生の様子です。
クロオオアリの女王アリは仰向けになっていて、トゲアリの女王アリは上からクロオオアリの女王アリの頸に咬みついています。この体勢は、寄生が成功しつつあることを表しています。

クロオオアリの女王アリは仰向けになり、トゲアリの女王アリは上から頸に咬みついている

寄生から12日後の10月4日の朝、まだ頸に咬みついているようでしたが、夕刻には、巣内を歩いていました。

まだ、頸に咬みついているようだ 10月4日7時54分撮影

巣内を歩いていた 10月4日16時50分撮影

この時期、トゲアリの女王アリが巣内を歩いていたということは、寄生に成功したと言うことです。クロオオアリの女王アリの姿は見られませんでしたが、おそらく殺されたと思われます。

このような場合、これまでの観察では、クロオオアリの女王アリの頸が咬み切られていることが多かったのですが、今回については確かめられませんでした。今朝まで、クロオオアリの女王アリとトゲアリの女王アリがいた近くには、クロオオアリの働きアリの塊がありましたが、これは、亡くなった女王アリを取り囲んでいるのでしょう。クロオオアリの女王アリの姿(死体)が見つからなかったのは、そのためなのでしょう。

今回は、たった1匹だけでトゲアリの寄生を試みたのですが、本日の様子から考えて寄生が成功しているとすれば、かなり希な例になります。これはとても意外なことです。

たった1例のトゲアリの寄生を試みる

9月19日にトゲアリの女王アリを41匹採集し、その内何匹かは事前にお声かけいただいていた方にお分けしましたが、それでも手元にまとまった数の女王アリが残りました。そこで、クロオオアリの1コロニーにだけトゲアリの女王アリを寄生させることにしました。
これまでの経験から、宿主側のコロニーの規模がある程度大きい方が良いように感じていましたので、2015年の5月15日に新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーS/N:B15002を用いることにしました。
9月22日の13時半頃、B15002から働きアリを1匹取り出し、クリアカップの中でトゲアリの女王アリと一緒にしました。間もなく、トゲアリの女王アリがクロオオアリを捕らえ、化粧を始めました。

間もなくトゲアリがクロオオアリを捕らえ、化粧を始めた 13時39分撮影

13時51分から1分30秒間の動画

クロオオアリがトゲアリの女王アリの肢に咬みついていましたが、やがて放しました。その後、両方共に自身の体に化粧をしていました。クロオオアリの方は、腹部がいびつな形にへこんでいました。

14時3分から1分30秒間の動画

クロオオアリの方から攻撃する様子はなく、トゲアリにもてあそばれている感じでした。トゲアリは引き続き、化粧に余念がありませんでした。

トゲアリの女王アリと一緒にするクロオオアリの働きアリは、特に考えがあったわけではないのですが、この1匹だけにしました。
14時17分直前に、トゲアリの女王アリと一緒にしていたクロオオアリをフィルムケースに移し入れ、このフィルムケースを蓋をしていない状態で、B15002の本巣の上方のアクセス穴の上に被せました。間もなく、トゲアリの女王アリは、B15002の本巣の中へ入っていきました。

14時17分から1分30秒間の動画

左上方のアクセス穴から入っていきました。その直後に複数のクロオオアリの働きアリに捕まってしまいました。やがて放たれますが、人工巣リトルアンテシェルフの上段で再び捕らえられました。

14時25分から1分30秒間の動画

その7分から8分後も、リトルアンテシェルフの上段で捕らえられたままでしたが、化粧を盛んに行っていました。

14時50分から1分30秒間の動画

それから24分から25分後、トゲアリは、自身の肢に咬みついて離れない1匹のクロオオアリを使って化粧をしていました。他のクロオオアリからは、攻撃はされていませんでした。

14時55分から1分42秒間の動画

その3分から4分後、リトルアンテシェルフの最上段に留まっていたトゲアリは、それまで咬みついていたクロオオアリから自由になり、上から4段目(下から3段目)に移動しました。最早、トゲアリを攻撃する者はいません。トゲアリはクロオオアリの塊の中でさえ自由に行き来できるようになっていました。やがて最下段の段へと移動しました。

14時59分から10分30秒間の動画

14時59分からは、トゲアリの女王アリの動きが活発になりました。最下段から2段目に移り、更に3段目へと移動しました。動きに余裕が見られ、化粧ではなく、身繕いもしていました。クロオオアリとの間に争いはなく、クロオオアリの集団がトゲアリを受け入れたかに見えました。更に、下から4段目へと上がっていきました。クロオオアリの塊の中へも入り込みました。クロオオアリの女王アリを探しているように見えました。やがて5段目(上から2段目)に入っていきました。実は、この段にクロオオアリの女王アリがいるのです。この段では、トゲアリの女王アリは、複数のクロオオアリの働きアリに、制止されました。不審がられているようです。1分10秒ほどたった時、複数のクロオオアリの制止を振り切って、クロオオアリの女王アリがいる塊へと進み、女王アリ同士の戦いが始まりました。戦いはトゲアリに有利に進み、背乗りから腹抱えへと体勢が変わっていきました。両者まぎれて一つ下の上から3段目に移動し、長い時間このままで膠着状態になりました。

寄生は順調に進んでいるように見えます。ただ寄生の成否は、何日も後にならなければ分からないものです。今後の経緯を見ることにします。

トゲアリの女王アリを採集(2018年)

例年、自宅から300km離れた彦根市内(滋賀県)でトゲアリの女王アリを採集していましたが、遠地のため、自宅近くで採集できればと思っていました。けれども、9月の上旬が過ぎても採集できないままでいました。そこで、都合のつく14日から、彦根市内へ採集に出かけました。
雨天の合間になった16日に採集場所へ出かけましたが、この間の天候が不順であったためか、地上を歩く女王アリの姿はありませんでした。

従来からの巣のありかの一つ 地上を歩く女王アリの姿はありませんでした 9月16日撮影

18日になり、やっと天気が回復しましたので、採集場所へ出かけました。まだ、地面は濡れている箇所が多く、早朝は結婚飛行に飛び立つには条件が良くなかったように思われました。案の定、この日、採集できたのは1匹だけでした。とても例外的な1匹で、今朝結婚飛行に飛び立った可能性と、以前に結婚飛行を行い、この日まで放浪していた可能性(こちらを参照)があるように思えました。

18日に採集したただ1匹の女王アリ

その翌日の19日は、2日連続の晴の日になり、トゲアリの女王アリが早朝に、結婚飛行を行うことが容易に予想できました。8時過ぎに採集場所へ着いてみると、案の定、たくさんのトゲアリの女王アリが地上を歩いていました。例年最も多くの女王アリが採集できていた狭い範囲の箇所だけで、大半の女王アリを採集しました。また、以前にも採集できていたその他の箇所でも採集でき、10時前までの2時間弱で、41匹を採集しました。

最も多く採集した箇所の環境 フィルムケースを置いている極近辺に多数の女王アリがいた

帰宅後、41匹の内3匹が肢を部分的に失っていたり、不自由であることが分かりました。ちなみに、採集中には、腹部を失ってもまだ生きていた女王アリを1匹と、肢を失っていることが分かり採集しなかった女王アリが1匹いました。蛇足ですが、この日の2時間弱の間に総計43匹の女王アリに出会い、その内4匹の女王アリが、生きている状態で怪我等をしていたことになります。その怪我等の割合は、11.6%程になります。もっとも、怪我ではなく、他にまるごと食べられた女王アリがいた可能性はあります。

この日、40匹程度を採集したのですが、それは、採集目標を予め40匹と決めていたからです。更に時間をかければ、それ以上採集できたでしょう。前日と比べてこれほど多く採集できたことから、今朝結婚飛行が行われたと断定してよいと思います。ただ、この結婚飛行が今年最初であったと断定することはできません。また、今年は9月に入ってから雨天が多かったことを鑑みると、以後にも本格的な結婚飛行が何回かに渡って行われそうです。

トゲアリの直短的社会寄生 初めての産卵

トゲアリの直短的社会寄生の試みでは、8例扱いましたが、その内の4例は昨年9月11日に採集した新女王アリです。その内、現時点では2例(S/N:T17003とT17004)が生き残っていますが、6月3日、T17004が産卵していることに気づきました。

卵が見える 6月3日17時7分撮影

産卵を確認できたことの意味は大変大きく、この方法(直短的社会寄生)でトゲアリのコロニーを人工的に作ることができることを意味しています。ただ、今の時点では、1例のみなので一般化することはできませんし、この後、卵から成虫まで育つのか分かりません。今後の経緯を見守りたいと思います。

トゲアリの引越先

2016年5月13日に塚山公園でトゲアリを見つけたことをブログ「岡山市内でトゲアリを発見」で書きましたが、ほぼ同じ場所で、トゲアリの巣になっていると思われる樹を見つけました。この樹は、2年前の発見とは違って、歩道のすぐ横にあり、とても観察しやすい場所にあります。昨年もこの樹については、トゲアリが僅かに上り下りしているところを見かけたことがありますが、今回はとても個体数が多いことから、おそらく近くから巣ごと引越してきたのでしょう。

5月16日15時58分撮影

5月16日15時58分撮影

まだそれほど大きくはない桜の木のようです。一部が朽ちていて、その中を巣にしているようです。

ところで、実はこの時間、自宅の庭ではクロオオアリが結婚飛行を行っていました。その観察を中断して、この塚山公園に来ていたのです。その目的は、この公園でのクロオオアリの結婚飛行を観察することでしたが、1つの巣口の中に羽アリがいただけで、結婚飛行は行われてはいませんでした。この公園では、クロオオアリの結婚飛行が既に終わっているのか、あるいはこれからなのかは判断できませんでした。

飼育中のトゲアリの様子 2018年4月

現在、飼育しているトゲアリの内、「直短的社会寄生」を試みているトゲアリ以外では、7コロニーを飼育しています。そのうち、最もよく繁栄しているのは、シリアルナンバーT140906-40です。2014年の9月11日にクロオオアリの巣NESTCON01024に侵入して寄生を始めました。2017年6月16日に、カップ型コンクリート製人工巣から小型の水槽へ移し替えました。これが原因かは分かりませんが、この年、特に8月に働きアリがたくさん死んでいます。8月にはトゲアリ(TW)が35匹、クロオオアリ(BW)が2匹、9月にはTW2匹、10月にはTW7匹、11月にはTW1匹、12月にはTW1匹、今年になってからは4匹が死にました(トゲアリは合せて50匹死んだことになります)。けれどもコロニーの規模はそこそこ維持されました。下の写真は、4月30日の様子です。

4月30日撮影 中央下方に女王アリが写っている

更に拡大すると 4月30日撮影

ツーバイフォー材で作ったコの字型の下駄のような置物の下にできた空間に、柱のように幼生虫を積み上げ、その周りに働きアリがいます。女王アリも健在です。
ガを3匹与えたところ、すぐに寄ってきて、分解を始めました。

ガを分解し始めた 4月30日撮影

異種間で共生するクロオオアリとムネアカオオアリ

B130605+R(旧S/N:B131015)の場合
現在のこのコロニーの元々のコロニーは、2013年の6月5日に採集したクロオオアリの女王アリのコロニーでした。この女王アリは、繭からの羽化を介助する能力がなく、記録によると少なくとも翌年の6月29日までは働きアリはいませんでした。その後、記録が途切れますが、2016年5月14日にはクロオオアリの働きアリが3匹、ムネアカオオアリの働きアリが4匹になります。働きアリがいるのは、これも記録はないので成虫や幼生虫がどの程度外部から導入されたのか分かりませんが、外部から導入されたことは確かです。同年の8月26日には、クロオオアリが19匹、ムネアカオオアリが2匹になっています。その後、同年の12月1日には、クロオオアリ15匹、ムネアカオオアリ1匹の中へ、ムネアカオオアリ(S/N:R15066)の幼虫4匹を加えています。翌年の2017年3月14日には、女王アリが死んでいて、働きアリは前年と同数でした。それからほぼ1年が経ち、2018年の3月8日、クロオオアリの働きアリ11匹とムネアカオオアリの働きアリ1匹が共存しています。

右の赤みを帯びているのがムネアカオオアリ

ムネアカオオアリとクロオオアリが栄養交換を行っている

R11055+070の場合
このコロニーは、2011年7月27日に採集した2匹のムネアカオオアリの女王アリのコロニーを、2015年11月29日に合併したものです。
S/N:SIMSMA01055(働きアリ4匹 幼生虫無 黒みの強い女王アリ)
S/N:SIMSMA01070(働きアリ8匹 幼生虫無 女王アリ無し)
2016年6月22日には、ムネアカオオアリの合併巣の生まれたばかりのムネアカオオアリの働きアリを1匹と、ムネアカオオアリのコロニー(S/N:R120614)の繭を1個加えました。その1週間後の29日、ムネアカオオアリのコロニー(S/N:R120614-05)の繭3個幼虫17匹卵9個を入れ、翌日には同じコロニーの幼生虫を多数入れています。同年7月5日には、クロオオアリの働きアリが1匹(記録にはありませんが、クロオオアリの幼生虫を加えていたと考えられます)とムネアカオオアリの働きアリが2匹になりました。同年8月25日には、ムネアカオオアリが4匹いて、S/N:R15071のコロニーよりムネアカオオアリの働きアリ12匹と幼虫29匹を加えています。また、同日、S/N:B15044+Rのムネアカオオアリの働きアリ1匹(攻撃され1時間後馴染む)とクロオオアリの働きアリ3匹(翌朝までに死亡)、繭4個、幼虫6個を加えました。翌朝、ムネアカオオアリの働きアリが2匹、瀕死の状態でした。同年の11月1日にはムネアカオオアリの女王アリが死んでいて、ムネアカオオアリが8匹、クロオオアリが2匹、幼虫が10匹前後になります。そして、同月30日には、ムネアカオオアリが4匹、クロオオアリが2匹になり、その翌年の2017年3月14日には、ムネアカオオアリが7匹、クロオオアリが2匹になります。それからほぼ1年後の2018年3月8日現在、ムネアカオオアリの働きアリ3匹とクロオオアリの働きアリ1匹が共存しています。

今ではたった4匹だが、種が異なっても仲良く暮らしている

共生に関するブログ一覧

クロオオアリとムネアカオオアリの同種間の共生
コロニー同士の合併 共存 その1  2015年11月13日
コロニー同士の合併 共存 その2  2015年11月13日
クロオオアリの合同コロニーに同種の女王アリを入れて 結果  2016年05月10日
クロオオアリの複数の女王アリは同居できるか 結果  2016年05月10日
ムネアカオオアリの女王アリの同居  2016年05月10日
ムネアカオオアリの合併コロニーの半年後  2016年05月10日

クロオオアリとムネアカオオアリの異種間の共生
異種のアリ同士は仲良くできるか  2013年04月16日
単独女王アリと異種間の養子縁組?  2014年06月29日
2種のオオアリが混在するコロニー  2014年07月03日
2種のオオアリの家族  2014年09月01日
ここにも異種合同の家族が  2015年07月13日
現有のクロ・ムネアカ共存コロニー  2016年05月14日
ムネアカオオアリはクロオオアリの卵を受け入れるか?  2016年06月16日

トゲアリの共生
トゲアリの家族は他家の子どもを受け入れるか  2014年09月02日
トゲアリのコロニーの遺族同士の合併・共存は可能か  2016年05月11日
トゲアリの女王アリの共存 その後  2016年05月11日
トゲアリの2つのコロニーを合併  2016年06月22日